親族の集まりで顔を合わせた姉が、「明日お休みなら2人で箱根に行かない?」と誘ってきた。シーズンでもなく平日だったため、宿はすぐに手配できた。翌朝姉が迎えに来たのは、寝不足でしょう?との気遣いから11時過ぎだった。高速にのってしまえば、箱根までは本当にあっという間だった。
もう少しドライブしていたいのに、と思っていると、姉の方から沼津まですぐだから足を延ばさないかと言ってきたので、助手席の私は任せることにした。お昼を過ぎた沼津港は人気がほとんどなく、港で働く人が一杯引っかけるような渋い店に入ることにした。
期待した海の幸は、光り物のオンパレード。お造り、握り、なめろう……食べられるものがない。そう、我が家は母の体質に合わない光り物は焼き物でしか出なかったから、苦手だったのである。さぞや同じ気持ちだと思いきや、姉は次々と注文し始めた。
サンマやイワシはピッカピカで肉厚で、ホントにキレイなピンク色をしている。それを姉は幸せそうに口に運んでいる。しばらくすると「い〜から、食べてみなさいって」と私を説得し始めた。「え〜い。困ったらのみ込んでしまえ」とサンマの握りをほお張った。あら、あら、あら、口いっぱいにやわらかな、甘く、濃厚なうまみが広がっていく。それを見届けた姉は得意げな顔をしている。そのとき私は、今回の姉の目的は最初から沼津にあったのではないかと確信した。