初めて一人暮らしをしたときは、調理器具を自分の好きなテイストで一から揃(そろ)えられることにワクワクした。「それは実用性がない」と母に言われても、曲げなかった。しばらくすると、そう言われた物はすべてというほど扱いにくさを感じたけれど、意地もあってなんとか使っていたように思う。「それも経験」と、聞かれてもいないのに回答を用意して。
何度か引っ越しをするうちに、選ぶものにハズレは大分無くなった。目下の悩みは台所が狭く、収納棚が全く足りていないということである。そうなると毎日使う物は出しやすいところに、そうでない物は下にいく。いやが応でも選別されていくうちに、機能的でないものが淘汰(とうた)される。不便さが工夫を教えてくれることになった。
中型のボールが一番使いやすいと思い込んでいたけれど、一番小さいのと大きいのが活躍する。中でも小さなボールとちびっこいフライパンが小回りがきくんだとわかった。料理しながら洗っては使う、というのを1回のごはんの支度中に繰り返すから。こうしてなんとか自分が使いやすいキッチンになっていくんだと、近頃妙にしみじみ思う。
がしかし、調理器具選びは堅くなったようだが、またもや悩みが発生中。ずっと興味があった器。先々月唐津を旅して以来、熱を上げ、もう何も入らないと思われた食器棚を新顔が侵入しつつあるのである。