夏に1週間近くも家を空けるのは気が気でない。数日前から花は買わないことにしたし、出る前には念のためと生ゴミを再度チェックした。
映画のロケから戻ってくると、突然夏は終わってしまったかのように涼しかった。蝉(せみ)と鈴虫が同時に鳴いていた。たまっている洗濯物を洗濯機に放り込み、慌てて夕食の支度に取り掛かる。野菜を刻む鼻先から近くで何かにおいをキャッチする。思わずカットソーワンピースの襟ぐりに顔を埋めてにおいをかぐ。違う。これではない。しばし……その正体は台ふきんであった。家を出る直前、シンクの水気をふいたのだ。
ふと思いだし、以前ライターの方から頂いた「ずらり料理上手の台所」という本を読み返した。おのおの工夫を凝らした自分だけの台所。調理器具も器も、料理好きなだけに多い。それをマメに手入れし、慈しんでいる。みな共通して、ふきんが籠(かご)にどっさり。洗い方もそれぞれ違うけれど、とてもキレイなものに感じた。私は熱湯で洗ってはいても、日光消毒が欠けているのだと改めて感じた。
洗濯機の洗い終わりのブザーが鳴ったので夜のベランダに干す。代わりに1週間も出しっぱなしにされてパリパリになった洗濯物を取り込み洗い直すことにした。明日は晴れますように。「天気の日の洗濯物はお日さまのにおいがする」と言った母の言葉を、久しぶりに思い出した。