布団から出ている鼻先が室温ぐらい冷たくなる冬の朝は、布団が恋しく、ぬくい足元をスリスリさせて一瞬の幸せを感じる。うっかりすると毎日二度寝しそうである。
しかし、学生時代の私はそんな冬の朝だって目覚まし時計などいらなかった。毎朝きっかり、7時半に芋の焼きあがる強烈なにおいに起こされた。母は、姉の部活の朝練のお弁当作りで5時起きだった。まだ太陽が昇る前、かじかんだ手で石油ストーブをつける。そのついでにアルミホイルに包んだ私のお芋をのせてもらうのだ。2階の寝室まで立ち込める、息苦しいほどのにおいは好物であるが故に、うれしかった。
アルミホイルをはがし熱いお芋を二分する。マーガリンをたっぷり塗って再び割ったお芋を合わせると、きれいに溶けて染み込むのだ。それをスプーンですくって口に運ぶ。ホクホクとは違う。2時間半かけて焼かれたお芋は、裏ごしを丁寧に重ねたスイートポテト以上にねっとりとつややか、極上のおいしさであった。お供は牛乳またはカフェオレ。黄金の組み合わせなのだ。私は中高6年間、飽きることなくこの冬の定番を食べ続けた。まさに「芋娘」。聞こえの悪いこの名称の由来が知りたくなる。
すっかり見掛けなくなった石油ストーブのある冬の家庭の風景。やかんをのせ、鍋をのせ、お餅も焼いた。見慣れていたこの風景はなんともよいものだったと思うのだ。