四、アタリマエを疑う
月に一度、断食します。
いろいろなやり方があるようですが、その入門書などを見てみますと「徐々に減らしていって、食べ始める時は、また重湯からまた少しずつ」というのが定法のようですね。このほうが身体にも良いんでしょうが、ボクの場合は少々手荒です。突然、丸一日何にも食べない。口にしていいのは、お茶か水だけ。塩も砂糖も、のど飴(あめ)も薬の類もダメです。日付が変わったら……ですから、零時になったら断食明け。夜中に辛口カツカレーでもキーンと冷えたビールでもなんでも、腹いっぱいになるまで食べます。これは、自分で決めたルールです。人に話すと笑われ、バカにされるところをみると、めちゃくちゃなんでしょうね。
始めたのは、8年ほど前だったでしょうか。ダイエットではありません。ほんの少しだけ飢えるためです。1日だけですから、そんなに苦しいことはありませんが、他の人が食べている時に、自分だけ食べられないのは嫌なものです。決行中はなるべく街をうろつくようにしています。わざと煙の立ち上るうなぎ屋の前を通ったり、焼き肉食べ放題の店の前でしばらく佇(たたず)んだり。夕方、デパートの地下食料品売り場に行くのが一番辛(つら)いですね。「おひとつ、いかが」なんて試食を勧められると、すごい顔で睨(にら)みつけているんじゃないでしょうか。つい手を出しそうになると、土門拳さんの撮られた、昔の小学校の昼食風景を思い出して、踏みとどまります。お弁当を持ってこられなかった子が、本を読みじっと耐えている写真です。
ほんの少し飢えてみるのは、ほんの少し考えるためです。日常アタリマエだと思っていることを、疑(うたぐ)るためです。空腹にひねくれたココロで、世間をハスに見るための断食なのです。
◇12月は、タレントの伊集院光さんです。
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■かんだ・さんよう
講談師。66年生まれ。北海道大空町出身。NHK教育テレビ「にほんごであそぼ」などに出演中。
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