三、たかが歌、されど歌
デビュー38年目、レコーディングした歌は2100を超えました。まだまだ日本の女も景色も歌い尽くせず、作りたいものも尽きず、本当に幸せなことです。
様々な出会いと別れがありました。3年前、阿久悠先生が亡くなられたとき、三木たかし先生が「さゆり、僕がついてるじゃない」と力づけてくださったんです。その三木さんも昨年亡くなってしまわれた。遺作の「桜夜(さくらよ)」は「歌の道に終わりはない、ときめきを探すことを忘れてはだめだよ」というメッセージが込められた、三木先生からの宿題だと思っています。30年も一緒に表現を追求してきた方々がいなくなってしまうのは、とてもさみしくショックなことです。でもそれが「人」なんだと、50歳を超えてから身に染みて思うようになりました。
その分、新しい出会いを大事にしたい。樋口了一さん作曲の「朝花(あさばな)」は、「石川さゆりに歌ってもらえないか」とご本人がレコード会社に持ち込んでくださったんです。2、3年温めて、デビュー35周年のときに披露しました。昨秋には、ロックバンド・くるりの2人に誘われて、京都音楽博覧会という音楽フェスに参加しました。太陽と風を感じながら外で歌ったら、すっごく楽しかった! 総立ちになった10代、20代のお客さまが、空に抜けるほどの声を上げてくれて。よし、深呼吸してこのエネルギーを吸い取っちゃおう、と思いました。
若い時からずっと歌ってきて、出産は大きな転機でした。産休の7カ月間で、それまで仕事場だったテレビが「娯楽」なんだと初めて分かったんです。お茶の間に楽しさを伝えるものなんだから、わたしも楽しんで歌わなくちゃ、と目からウロコが落ちましたね。
歌と素直に向かい合いたい。人として、女として、母として、自分が何者なのかを見失わないでいたいんです。
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■いしかわ・さゆり
歌手。58年生まれ。3月24日、106曲目のシングル「だいこんの花」を発売。7月に明治座で「長崎ぶらぶら節」を再演する。
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