ずずっとそばをすする音が静かな店内に響く。格子の向こうでは、湯上がりの男女が作務衣姿で、酒を酌み交わす。
東京都墨田区に2年ほど前にオープンした「両国湯屋 江戸遊」。粋な江戸の文化とモダンをテーマにした銭湯スパで、ひのき風呂やフィンランドサウナなど九つのお湯が楽しめる。線路を越えれば国技館、周辺には相撲部屋も多いため、まげを結った力士も姿を見せる。
夜遅い時間に来店した人のために「食事処」では午前4時までの深夜メニューを用意する。酒とそばと、つまみが数種。「湯上がりにおそばを2枚、ささっと平らげていく女性もいらっしゃいます」と店長の武本悟さん(32)。岩盤浴でたっぷり汗を流したあとのビールを楽しみにやってくる人も少なくない。
近所の飲食店で仕事を終えてきたという2人がグラスを手に静かに語らう。午前3時すぎ。同じフロアにある「休み処」では、早めに入浴を終えた人たちがリクライニングシートに体を横たえ、すやすやと寝息を立てている。話す声も自然と抑え気味になり、しっとりとした大人の時間が流れる。
深夜を過ぎてからも始発待ちの人たちで客足が絶えることはない。「ここに来ると日頃の疲れも吹き飛びます」。仕事帰りにやってきた40代の男性は、月1回ペースで利用しているという。翌朝スーツを着てそのまま会社に向かうこともある。
ほろよい加減で鼻歌まじりに浴場に向かう人や一服吸いに喫煙室に行く人が廊下をすれ違う。落ち着いた照明の館内を裸足で歩く人たちは温泉旅館にでもいるようにくつろいでいる。午前4時が近い。「明日はいつもより仕事が遅めなので、一眠りして帰ります」。食事処にいた最後の客がゆっくりと腰を上げ、数メートル先の「休み処」に消えていった。
(清土奈々子)
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「二八ざるそば」(650円)とつまみ
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【両国湯屋 江戸遊】
東京都墨田区亀沢1の5の8(両国駅、TEL03・3621・2611)。午前11時〜翌午前9時。2300円(深夜料金別途必要)。入場は中学生以上。岩盤浴は午前2時まで。午前6時〜8時の朝風呂タイム(1000円)も。