大きな荷物の横で、出発の時を待つ客が3人。かすかに掃除機の音が響くだけの静かなロビーを抜け、扉を開くと、調理台が並ぶ巨大な空間が広がっていた。ホテルニューオータニの本館643室のルームサービスの注文を一手に引き受ける厨房(ちゅうぼう)では、コック帽姿の男性たちが忙しく動き回っている。
料理長の太田高広さん(42)がオーダー表をにらみ、同時刻に集中する注文の調理のタイミングを見計らう。調理台の横には、銀のカトラリー、ジャムがセットされたワゴンが並ぶ。
午前6時20分、「そろそろ」という太田さんの声で、もう1人が付け合わせのベーコンをオーブンへ。スタッフがシェフの動きをうかがい、トーストを焼き始める。太田さんがはしで卵をかき混ぜながらフライパンを小刻みに振ると、つるりとしたオムレツが出来上がった。温かいパンとポット入りのコーヒー、ジュースと水のグラスが一斉にワゴンに載り、6時半、専用エレベーターに乗り込んだ。
「トマトジュース タバスコ付き」「カリカリに焼いたベーコン」「両面焼いた目玉焼き」。午前0時ごろに回収されるオーダー表からは、様々な朝の風景が見えてくる。「どんなお客さんなのか、想像しながら作るのは楽しいですよ」と太田さん。
全粒粉のパンと飲み物の簡単な朝食を載せたトレーを抱え、入社2年目のスタッフが足早に厨房を後にした。廊下からエレベーターへと、ドアを越えるたびに姿勢がピンと伸びていく。客室フロアへ足を踏み入れると、ゆったりとした足どりで、迷うことなく客室へ向かった。
壁の新聞受けにささったままの英字新聞をさりげなく取り、扉が開くと軽く一礼。温かい朝食と新聞とともに、一日の始まりを告げた。「グッドモーニング」
(蒔苗沙都子)
|
|
アメリカンブレックファースト
|
【ホテルニューオータニ】
東京都千代田区紀尾井町4の1(赤坂見附駅、TEL03・3265・1111)。「アメリカンブレックファースト」(午前6時〜11時、3675円)は、卵料理と7種から選べるパン、ジュース、コーヒー付き。サービス料別。