梅屋敷の改札を出て、すぐ目の前に
活気あふれる「梅交会商店街」が左右に延びていた。
ぼくら探検隊は、例によってお宝を探しながら、
人ごみのなかをゆるゆると歩き出した。
気温は低いけれど、抜けるような晴天なので、
さほど寒さは感じない。冬の散歩日和だ。
「オレさ、年末ジャンボ、3枚バラで買ったよ。
億万長者になったら、やっぱり黙っておくべきだよね」
うぬまさんが歩きながら夢物語を語った。
「3枚? ぼくは買うなら10枚連番で買いますよ」
「なんで?」
「確率の問題ですよ。バラだと万一、一等が当たっても、
前後賞が取れないじゃないですか」
「あ、そっか。たしかになぁ……」
うぬまさんは、とても深刻な顔をしたけれど、
どうせ当たらないので心配しなくても大丈夫である。
そして、その深刻な顔のまま、今度は情けない声を出したのだ。
「ああ、腹減ったぁ。どっかで休んでいこうよ〜」
まだ、歩き出して1分である。
しかし、腕時計を見たら、午後二時過ぎ。
そういえば、今日はまだ二人とも昼食をとっていないのだった。
「じゃあ、おもしろそうな店を探して、
そこでご飯でも食べましょうか」
ぼくが言うと、うぬまさんはいきなりやる気になって、
歩く速度が倍になった。
商店街の一角に、昔ながらの手作りの製麺所があった。
その店先で、おじいちゃんが自家製麺のやきそばを焼いていた。
なんとも言えないソースのいい香りが、通りに漂っている。
「う、うまそー!」
二人で飛びつきそうになったとき、
製麺所のとなりのマンションの小さなエントランスに
ぼくは不思議な看板を発見してしまったのである。
『のり』
『東京湾の釣り具』
そう書いてある。
「ん? うぬまさん、これ、何でしょうね?」
マンションの入口にある看板としては妙な感じだ。
「あ、ホントだ。なんでこんなところで、
のりと釣り具なんだろう……」
すでに空腹で頭の回らない腹ぺこ探検隊が
看板の前で首をかしげていたら、
目の前に一人の男性が仁王立ちして、よく通る声を出した。
「どうぞどうぞ、店はこの中なんで、見てってください。
こっちこっち、ほら、どうぞ、遠慮しないで!」
男性は、と〜っても怪しかった(笑)
かなりの大柄であるうえに、頭はまるで
パイナップルみたいなヘアスタイルなのだ。
モヒカンのてっぺんにゆるくウェーブがかかった感じである。
ヒゲをたくわえ、派手な白ふちの眼鏡までかけている。
「遠慮しないでいいですから、
お茶を出しますから、ほら、どうぞどうぞ」
尻込みしていたぼくらは、しかし、その男性の勢いにひっぱられて
マンションの階段を上がり、二階にある部屋に通された。
玄関で靴を脱ぎ、スリッパをはいて恐る恐る上がり込むと、
そこは360度、釣り具でいっぱいの異空間だった。
普通のマンションの一室が、なぜか釣具屋になっているのだ。
男は名刺を差し出した。
『ベイエリアのつりびと工房 代表 柳田雄治』
とあった。
(2 につづく)