木枠のショーウインドーに、黒光りした、重厚感ある万年筆が並んでいる。東京都文京区の「川窪万年筆店」は、昭和元年創業の、今では数少ない手作り専門の店だ。
「万年筆は、字に表情が出ますね」と、魅力を語る3代目川窪克実さん(43)。ボールペンとは違って、線の強弱や曲線、角がきっちりと出る。ペン先を紙に置けばインクが流れ出すため、強い力もいらない。
初代の祖父が作ったものを、数十年来愛用する人がいる。技術を受け継いだ克実さんは、軸やペン芯にエボナイトという硬質ゴムを使う。樹脂製が大半の近頃では珍しい素材で、劣化しにくく、握り心地も弾力がある。
美術工芸品に近い「創作万年筆」も手掛ける。軸の表面に貝や玉砂利をつけたり、軸をナンテンの木や竹で作ったり。多少値が張るが、素材探しから製作まで愛情をたっぷり注いで作る1本だ。
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日本全国、海外からもインターネットでオーダーメードの注文を受ける「中屋万年筆」は、メールのやり取りで客の細かな要望に応じる。「ペン先は万年筆の命です」と、デザイナーの吉田紳一さん(42)。
筆圧、ペンを持つ位置、筆記スピードなど10項目にわたる書き癖を自己申告してもらい、その「カルテ」を基にペン先を調整する。使い始めから、さらさらとした書き心地が期待できる。輪島漆器の職人による漆加工など、軸へのこだわりも手作りならではだ。