ビルの屋上に広がる緑
わすれな草、サクラソウ、チューリップ――色とりどりの花が咲き誇り、まるで草花の宝石箱のようだ。樹齢40年を超えるしだれ桜の間から、国会議事堂の三角屋根がちょうど目の高さに見える。足元のずっと下の方から、車の音がかすかに聞こえてくる。
東京都港区の、10階建てのビルの屋上。大手建設機械メーカーのコマツが、社屋の新築を機に41年前に造った庭園だ=写真右。十数種類の桜などの花木が生い茂る。チューリップやアジサイは、30以上の品種をそろえている。キタダケソウなど、高い山でしか見ることの出来ない高山植物まである。オフィスビルの屋上だが、金曜の午後だけ一般に開放される。
「いろんな種類の旬の花を用意して、訪れる人がいつでも楽しめるような庭にしています」。日本の「屋上庭園」の先駆けとなったこの場所を、ほとんど1人で管理してきた大山久文さん(68)は言う。
● 5年間で10倍に ●
ビルの屋上に植栽し、大規模な緑を造り出す動きが広がっている。国土交通省によると、全国で新たに屋上緑化された面積は、一昨年までの5年間で約10倍になった。
「都市部の気温が高くなるヒートアイランド現象を和らげようと、屋上緑化の助成金制度や自治体の条例もできて、オフィスビルを中心に広がってきました」と、屋上緑化の普及活動に取り組むNPO屋上開発研究会の安井泉・事務局長。「癒やしを求める時代の流れもあると思います。最近は、菜園なども増えてきました」。たとえばデパートの屋上も、以前だったら遊園地が普通だったが、緑の中でゆったりとできる公園のような場所に変わってきていると言う。
● デパートも変身 ●

芝生広場で子どもたちが元気に走り回り、木陰では家族連れがお弁当を食べる。玉川高島屋の屋上庭園は、広さ約4100平方メートル、「ショッピングセンターとしては都内最大級」がうたい文句=
写真右。また、約50種類のバラが育つ本館中層階の「ローズガーデン」は、今月中旬から見ごろを迎える。
伊勢丹新宿店では、植物のネームプレートについているQRコードを携帯電話で読み取ると、付近の草木の詳しい情報を見ることができる。会員制のガイドシステムもあり、手のひらサイズの端末をICプレートにかざすと、草花の豆知識やクイズが音声付きで画面に表示される。