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2007.8.28(火)更新  特集/職人の工房を訪ねて
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職人の工房を訪ねて


 鍛え抜かれた技と、妥協を知らない情熱で、ものづくりに取り組む「職人」。近寄りがたいイメージもありますが、仕事場を公開したり製作体験をさせてくれたりする所も増えています。東京・下町の工房を訪ねてみました。


現場知り、愛着持って

工房の様子
一枚板のテーブルなどが展示される店内=
ウッドワークで
 無垢(むく)ならではの木目を生かし、滑らかな手触りに仕上げた家具が並ぶ店。その店の中ほどに、地下へと続く階段がある。下りていくと、ぷうんとスギの香りがした。引き戸の先には使い込まれた木工機械が置かれ、天井には集塵機(しゅうじんき)の管がつたう。学校の図工室を思わせる工房で、3人の職人が木と向かい合っていた。

 東京・御徒町で、創業百年をこえる材木屋が、家具店「ウッドワーク」を開いて14年になる。創業当時から、材木を仕入れ卸す一方で大工を抱え、歌舞伎座の舞台製作などをも手がけてきた。頼まれると家庭用の家具も作った。店を構えたのはその延長にある。

 カーン、カン、カン――。高く乾いた音が工房に響く。テーブルの脚となるパーツ同士をはめ合わせるため、鑿(のみ)と金槌(かなづち)を使って接合部の大きさを微調整する作業だ。「接着剤の水気で木が膨張することを計算して、たたいていきます」と店長の青山和志さん(36)。その隣で、パーツ一つひとつにヤスリがけをし、かたちを整える工程が進む。作業台の奥には、テーブルの脚の試作品が幾つも立てかけられていた。

 今年3月から、積極的に工房を公開するようになった。作り手が試行錯誤を重ねる姿、時間と手間をかけて家具をつくる過程をすべて見ることができる。それは、手にする家具に愛着を持ってほしいからだ。そして、「家具を『育てる』ように長く使ってもらいたい」と、手入れ法の指導にも力をいれる。




■ウッドワーク
 「ウッドワーク」(地図の(1)参照)台東区台東4丁目、下甚商店内(御徒町駅)。午前11時〜午後7時。(月)休み。問い合わせは03・3833・2797。

技と勘が生む細密さ


下書きをせずに切り込む=
小林硝子工芸所で
 絡み合うように走るシャープな線。幾何学模様に覆われたガラスの面が、光の屈折によってきらりと輝く――。細かな彫りが施された平皿やぐい飲みなど、江戸末期からの伝統を誇るガラス工芸品「江戸切子」が並ぶ。ここは江東区の「小林硝子(がらす)工芸所」。年季の入った工具にうずもれるようにして、3代目小林淑郎さん(57)が手元に集中する。先達の技を受け継ぐこと三十数年、伝統的工芸品産業振興協会が認定する、江戸切子の伝統工芸士の1人だ。

 ダイヤモンドの刃がついた金属盤を回転させ、そこにガラスの表面をあてて文様を刻んでいく。「接触させる力の入れ具合で、切り込む溝の幅や深さを調節しています。この感覚を覚えるだけでも、5年ほどかかりますね」と淑郎さん。

 文様の基本は12パターン。魚のうろこを思わせる「魚々子(ななこ)」や、竹を編んだような「矢来」と様々だ。熟練の職人になると、自由に組み合わせ、より複雑な文様を生みだす。伝統工芸といえども型通りではなく、そこに職人の個性が出るという。

 ギーンギーンと、ガラスを削る音が静かに響く。大きさや幅が異なる200種ほどの金属盤を使い分け、粗削りから本削りへ、さらに磨いてつやを出す。黙々と手を動かすことで生まれる伝統品、その仕上げには「淑」の字を刻む。ここ数年、見学や削り体験も受け付け、「本物を伝える」場にもなっている。




■小林硝子工芸所
 (2)江東区猿江2丁目(住吉駅)。午前9時〜午後5時。(日)(祝)(休)休み。見学、体験(2000円)は要予約。問い合わせは03・3631・6457。

地図

◆銅器◆ 銅銀銅器店

 鍋や急須など銅製の日用品=写真=を製作する。1924(大正13)年の創業以来、1枚の銅板を焼きなまし、木づち、金づちでたたいて仕上げる。最近の売れ筋は、卵焼き鍋(6300円)。銅は熱伝導がよいので、夏はビアジョッキ、冬は湯たんぽなどもおすすめ。見学可。台東区浅草4丁目(つくばエクスプレス浅草駅、(3))。午前10時〜午後7時。不定休(来店前に要連絡)。問い合わせは03・3872・7328。



◆足袋◆ 向島めうがや
 江戸末期創業、あつらえの足袋専門店。足幅や足首の太さ、甲の高さ、爪(つめ)の角度など20カ所以上を測って型紙を作成し、履き心地の良さを生み出す。試し履き期間でフィット感を改善できる。6足から販売し、白足袋(計3万6960円から)のほか約70種から選べる柄足袋も。住職や、日舞やお茶をたしなむ人、着物のおしゃれを楽しむ若者にも好評。見学可(要予約)。墨田区向島5丁目(押上駅、(4))。午前9時〜午後6時。(日)(祝)(休)休み。問い合わせは03・3626・1413。



◆竹細工◆ 大沢竹芸

 「網代」「菱目(ひしめ)」など数十種類の竹編みの技法を使い、旅館のインテリア、芝居の小道具などを受注製作する=写真。この道60年の大沢順一(77)さんの指導のもと、「ござあみ」「四ツ目」などの編み方体験(1000円)や見学可(いずれも要予約)。台東区元浅草4丁目(稲荷町駅、(5))。午前9時〜午後5時。(土)(日)(祝)(休)休み。問い合わせは03・3844・0176。



◆べっこう◆ 磯貝ベっ甲専門店
 ウミガメの一種「タイマイ」の甲羅を使い、アメ色の中にバランスよく白い模様が入るように仕上げる。かんざしやネックレス、タイピンなど気品ある品々(約3000円から)。靴べらや耳かきなど日常使いの物も。ペンダント作り体験(3000円、中高生1000円、2週間前までに要予約、4人以上から)や見学可。墨田区横網2丁目(両国駅、(6))。午前10時〜午後6時。(土)(日)(祝)(休)休み。問い合わせは03・3625・5875。

(2007年8月28日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください。)
 
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