新酒の知らせ軒先に
11月中旬、東京・神保町にある甲子屋(きのえねや)酒店の軒先に青々とした杉玉が掛けられた。今年醸造された新酒の入荷を知らせる風物詩だ。同店、小川聡さん(28)の顔がほころぶ。一年の中でも、最も心待ちにしていた日だ。
店には蔵元と直接取引をする酒が多く並ぶ。各酒が持つ個性、蔵人(くらびと)が酒に込めた思いを伝えたいと、客との話にも熱が入る。「ここ数年はひとりでお越しになる女性が増えていますね」と小川さん。
デパ地下の和洋酒売り場でも同じような動きがある。東急百貨店で日本酒のバイヤーを務めて9年になる高田明さん(46)は、「香りが立ち、旨(うま)みを感じやすい冷酒を買い求める女性が増えている」という。同店はそんな女性客を意識して、香りの華やかな吟醸酒以上の180ミリリットル飲みきりサイズを十数種そろえ、今後より充実させていく意向だ。
日本酒造組合中央会も、女性にもっとおいしく、オシャレに日本酒を楽しんでもらいたいと、3年前から講座を開講する。新しいものに対して感度が高い30代の女性をターゲットに企画したが、参加者の年齢層は20〜50代と幅広い。講師の一人でタレントの島田律子さん(39)は「日本酒は懐の深い飲みもの。日本食だけでなく、イタリアンとの相性もいい」と、食事と一緒に楽しむスタイルを薦める。
日本酒は、原料の水と米、蔵人の技術の結晶。高度な醸造技術を要する繊細な酒だ。「飲む温度が5度違えば味の印象も変わる」と同会広報担当者。雪冷えや花冷え、日向燗(ひなたかん)に人肌燗と、飲用温度の表現も多彩。それぞれの酒の味、香りに合った適温がある。
秋口の冷やおろしに続き、これから新酒の季節を迎える。まずは一杯、自分好みの日本酒を見つけてみませんか。