
春の気配を感じる3月のある日。裏千家流のグループが主催する野外茶会、野点(のだて)に参加した。
茶会のテーマは「花畑」。事前にイメージを膨らませて、テーマに沿ったお気に入りの道具を参加者6人が持ち寄った。レジャーシートを敷いた上に淡い緑とピンクの布をかけて「即席茶空間」を準備。いよいよ茶会のスタートだ。
カジュアルな野点の場合、茶を点(た)てる時に使う茶筅(ちゃせん)のほかは身近な生活用品で代用できる。参加者の女性は、茶わんの代わりに愛らしい花柄のカフェオレボウルを持参。敷物はお盆を使えば外でも安定して道具を置くことができる。カラフルで持ち運びしやすいマカロンや金平糖などを茶菓子として並べると、一層彩り鮮やかな茶会の席となった。
大切なのは「見立ての心」だという。高価な茶道具がなくても、日々愛用する品を茶道具に転用し、工夫することで茶会は十分に楽しめる。「楽しく、おいしく」がまず基本だ。
「お茶とともに景色を楽しむ野点は特別な時間です」と話すのは、休んでいたけいこを昨年から再開した会社員の中沢文明さん(38)。金沢で過ごした学生時代は、季節の節目に野点を楽しんだという。「開放的な外の茶会では、参加者同士の独特の一体感が生まれるんです」
やわらかな草の上に腰をおろして一服。掛け軸のかわりに木々を眺め、抹茶の香りを楽しみながらのひとときは格別だった。
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(左)茶を点てるための湯は保温性のあるポットに入れて持ち運ぶと便利 (右)基本の道具 |

長年茶道具を手がけてきましたが、茶歴はそれより長く、物心ついたころから身近な存在でした。家に来る近所の人や八百屋さんが縁側に腰をおろし、抹茶で一服していて、茶といえば抹茶のことだと思っていたほどです。
茶会を催すというと、つい作法にとらわれがちですが、大切なのは何より来た人においしく飲んでもらうこと。旅先で見つけたボウルを茶わんに見立てて出してもいいのです。亭主のちょっとした心意気で、同席した人が身分や地位を越えて話題を共有できるのが茶のよさです。
例えば、茶わんにお茶請けのピスタチオを盛ったという話を聞き、私たち作り手からは思いもよらない発想の柔軟さに驚かされることがあります。使う人が道具と向き合い、器本来の機能が最大限に生かされるときに、作りがいを感じます。
茶道具を介して話が弾むのもいいでしょう。茶の醍醐味(だいごみ)は、客をもてなす心が相手に伝わることなのです。
「村瀬治兵衛」漆芸展 4月7日(月)〜19日(土)、東京・銀座のギャラリー「無境」
(TEL03・3564・0256)。(日)休み。
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野点セット
アウトドアメーカー「モンベル」が登山者向けに開発した携帯用の野点セット。「山で気軽に茶を楽しめるように」と、登山家で茶を愛する同社会長の辰野勇さんの発案によって生まれた。メラミン製の茶わん、折りたたみ式の茶杓(ちゃしゃく)、ケース付きの茶筅など一式が小さな巾ちゃくに入っている=写真。5700円。全国の同社店舗とインターネット(http://www.montbell.com)で販売中。問い合わせはカスタマー・サービス(0088・22・0031)。
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抹茶のおいしい点て方教室
うおがし銘茶が月1回、茶道初心者向けに開催。社員が講師となり、テーブルを囲んで抹茶の点て方を指導する。抹茶の保存法など茶専門店ならではのアドバイスも。第4(金)、午後1時、3時(8月、12月を除く年20回)、東京都中央区湊3丁目の本社(新富町駅)。2500円(茶わん、茶筅など一式付き)。各回先着30人。申し込みは店頭または電話で(「マリオンを見た」と)。問い合わせは03・3552・6871。
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茶室 徹(てつ)
美術館や梅原龍三郎のアトリエからなる清春芸術村の敷地内に建つ茶室=写真。樹齢80年のヒノキを支柱に、地上約4メートルの茶室には1.7坪の空間が広がる。東大教授で建築史家の藤森照信さんが設計し、イラストレーターの南伸坊さんら縄文建築団のメンバーが手伝った。屋根には銅板、壁にはしっくいを施し、見る角度によって様々な表情を見せる。外からの見学のみだが、その造形の面白さから多くの人が訪れる。山梨県北杜市長坂町(中央道長坂インター)。美術館は別途入館料。午前9時〜午後5時。(月)((祝)の場合は翌日)休み。問い合わせは0551・32・4865
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(2008年3月25日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)
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