美術館で絵画を鑑賞するように、街なかで建物を見て歩く。そんな建築巡りツアーを開く建築史家の斉藤理さん(35)の案内で、日本橋周辺の名建築を訪ねた。
中央通りに面した三井本館からスタート。オフィスビルとは思えない、石造りの重厚感ある建物だ。特に目を引くのは、外壁を取り囲む列柱。上端に施された「アカンサスの葉」の装飾は繊細で女性的。コリント式の特徴という。「品位を表現したかったということが見て取れます」と斉藤さん。かかわった人たちの思いが建物の「表情」を作っているという。
この列柱を舞台に5月16日から、「都市楽師プロジェクト」の演奏会が開かれる。トランペット奏者などがずらりと並び、建物に合わせた曲を披露する。「石造りだからこそ出せる音の響きを聴いて、建物へも目を向けてもらえれば」と企画した井上絢子さん(31)。
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日本銀行本店へ。高い外壁に囲まれた荘重なたたずまい。緑色の屋根は優美さをうかがわせる。赤れんがの東京駅と同じく、明治期の建築家・辰野金吾が設計した。
日本橋を渡ると、日本橋高島屋。一見、華やかな建物だが、見どころは意外にも「和の要素」という。隅を曲面に仕上げた「折り上げ天井」、屋根を支える「垂木」など、日本の社寺建築の特徴が随所にある。総務担当の敷田正法さん(61)は「内観は創業時のまま。昔を懐かしんで来てくださる方がいることも喜びです」。
最後に、東京証券取引所の隣の日証館。連続するアーチ型の入り口や窓が美しい。裏手を流れる日本橋川が取引の要だったことから、かつては川側が建物の正面だったという。
「経済や商業の中心として栄えてきた街。その誇りが、趣向を凝らした建物のデザインにも表れています」と斉藤さん。歩き終わり、「日本橋」という街の歴史や人々の息づかいを感じた。
写真上:本館、新館などからなる日本銀行本店
同中 :日本橋高島屋のエレベーターホール
同下 :東京証券取引所に隣接する日証館