埼玉県小川町。駅前通りの一角に、ひときわ存在感を放つ古い木造家屋がある。創業260年の
割烹(かっぽう)旅館「二葉」の本館だ=
写真。
引き戸を引いて中へ。きしむ板張りの廊下を進む。突き当たりが食事のできる「月の間」。「八月の狂詩曲(ラプソディー)」の撮影中に二度訪れた黒沢明監督の要望でテーブル席にした。
「恐(こわ)いイメージとは違い、優しいおじいさんでした。十草模様の食器を懐かしんでいたようです」と、14代目の八木忠太郎さん(54)は言う。
名物はのりをまぶしたご飯に秘伝のつゆをかける「忠七めし」。幕末の剣豪・山岡鉄舟の指南で創作して以来、変わらぬ味を守り続けている。
現在の本館は1933年に建てられた数寄屋造り。再現が難しい「さび壁」、精巧な組子障子、自然木を生かした床柱など見どころは尽きない。文化財に登録された04年以降は見学会も開催。八木さんが建物を巡る物語を紹介する。「知ってもらってこそ価値が生まれます」
【二葉】
埼玉県小川町大塚(小川町駅、TEL0493・72・0038)。
「月の間」での食事は要予約。「忠七めし小会席」3990円から。
第一(月)休み。本館見学会は4人から受け付け。4800円(食事付き、要予約)。