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山にかかわる名前、標高50メートル以下、山に似た形。イラストレーターの中村みつをさん(56)は、そんな場所を「超低山」と名付け、散策を楽しむ一人。富士山にちなんだ東京都心の超低山を案内してもらいました。(櫛田恵子、杉田裕実、福アニー)
富士信仰が盛んだった江戸時代、富士山に行けない人々にもご利益があるようにと、多くのミニチュア富士山「富士塚」が関東に造られた。このうち鳩森八幡神社にある「千駄ケ谷富士」は、現存するものでは都内最古といわれる。「形がわかりやすく初心者にもってこい。夏は涼んだり、新緑を見たりするのがおすすめ」と中村さん。
石段を10段ほど登ると、早くも7合目に到着! 洞穴内の「身禄像」を見た後、いよいよ頂上へ。冷え固まった富士山の溶岩に囲まれた「奥宮」=写真=、その両脇にある「金明水」「銀明水」、斜面から突き出す「釈迦の割り石」、裏手に続く急斜面「砂走り」など、見事な再現ぶりに驚く。江戸時代と現代が交差しているようだ。
「低山登りは、すぐ登らずに周りを歩いたり、山をめでたりして楽しみをとっておくのがポイント。江戸の町民の気分で、当時を想像して歩くのも楽しい」
■千駄ケ谷富士 高さ約7メートル。渋谷区千駄ケ谷1の1の24(北参道駅)
大都会の新宿区にありながら、森林浴が楽しめそうなほど緑豊かな戸山公園。そこにある箱根山= 写真=は、なだらかな斜面が富士山を思わせる超低山だ。登頂ルートは四つある。
東側から階段を45段ほど上り、見晴らしのいい頂上へ。眺望に驚いていると、涼風が心地よく吹き抜けていった。「完全な山風だよ」と中村さん。
その昔、尾張藩主だった徳川光友が、大きな池や渓谷のほか、東海道五十三次の小田原宿などを模して造らせたという広大な戸山荘庭園。今も残る当時の築山こそ、箱根山だ。「ビルなんてなかった時代、お殿様がここから富士山を眺めていたと思うだけで楽しいでしょう」。
富士山の方角にそびえたつ新宿のビル群が、蜃気楼(しんきろう)のように感じられる。ゆったりとした時の流れは、不思議と飽きない。子供の頃、いつまでも外で遊んでいた記憶がよみがえった。
■箱根山 標高44・6メートル。新宿区戸山2、戸山公園内(西早稲田駅)
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| 晴天時には右手に富士山が見える |
富士山を眺めるために訪れたのは代官山の西郷山公園。中村さんは「天候次第では感動的な夕日も見られますよ」。夕暮れ時を狙い、中目黒側から緩やかな登山道を5分で登る。山頂は芝生と遊歩道の展望地。眼下に目黒の街並みが広がる。
西郷山は、明治初期に西郷隆盛の弟従道が兄を迎えるため造った屋敷の跡地。しかし隆盛は西南戦争に敗れて他界、ここを訪れることはなかった。山頂には桜島の溶岩でできた記念碑もある。西郷家ゆかりの地として、鹿児島市が寄贈したという。
この日は薄曇り。夕日も顔を見せてくれなかった。中村さんは「景色は変わっても、風だけは昔と変わらないのでしょう」。初夏の風を肌に感じ、従道が兄を思いながら眺めたであろう当時の風景を想像した。
■西郷山公園 標高36メートル。目黒区青葉台2の10の28(代官山駅)

山歩きの好きな中村さんが23区内の「超低山」を厳選。カラーイラストとともに独自の楽しみ方や周辺の見どころも紹介する=写真。書肆侃侃房、135ページ、1365円。
※品川富士のみ高さを表記。「お江戸超低山さんぽ」参照
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| 名前 |
標高(m) |
所在地 |
ポイント |
| 藤代峠 |
35 |
文京区本駒込6の16の3(駒込駅) |
山頂から六義園内が一望できる。かつては富士山も見えたという |
| 愛宕山 |
25.7 |
港区愛宕1の5の3(神谷町駅) |
男坂(86段の石段)を上り切った山頂に、緑豊かな愛宕神社がある |
| 飛鳥山 |
25.4 |
北区王子1の1の3(王子駅) |
江戸時代から花見の名所として人気。秋には紅葉が楽しめる |
日暮里
富士見坂 |
― |
荒川区西日暮里3の7(西日暮里駅) |
都内にいくつかある富士見坂のうち、実際に富士山を見る名所として有名 |
| 待乳山 |
約10 |
台東区浅草7の4の1(浅草駅) |
隅田川西岸でコブのように盛り上がる。江戸時代、錦絵に多く描かれた |
| 品川富士 |
約5 |
品川区北品川3の7の15(新馬場駅) |
明治2年に造られた富士塚は、荒々しい岩肌。登山道もどこかスリリング |
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