渓谷 千差万別の紅葉
一口に紅葉といっても様々で、東北地方はその変化が豊かだ。 青森県の八甲田山では、田茂萢岳(たもやちだけ)の山頂にかかるロープウエーからの眺めが絶品。赤や黄色に彩られたブナ、ナラ、カエデが一面に広がり、色鮮やかなじゅうたんの上にいるようだ。 湖と紅葉の取り合わせもすばらしい。青森・秋田両県にまたがる十和田湖は山に囲まれているため、湖面から360度の紅葉を堪能できる。外輪山の赤や黄色が、空と湖の青さに映え、揺れる湖水に紅葉の散る姿が美しい。 十和田湖では渓流と紅葉も楽しめる。唯一流れ出る奥入瀬川。頭上を覆う紅葉を葉の裏から見ることができる。「ドーッ」「ザー」「サワサワ」と流れにより音を変える渓流と、色づきながらも、うっそうとした感じを漂わせる紅葉に自然の迫力を感じる。 山岳との妙は八幡平(はちまんたい)。全長27kmアスピーテラインでは、カーブを曲がるたびに絶景が広がり、紅葉のパレードが楽しめる。
静寂を楽しむ
穴場とも言える静かな紅葉狩りを楽しめるのが八甲田南部の蔦(つた)沼と、秋田県東部の抱返り渓谷。ブナの原生林に囲まれて建つ「蔦温泉」の裏手にある蔦沼では、つややかな紅葉と、紅葉の色彩をそのまま映し出すかのような澄み切った沼の景観が楽しめる。 田沢湖町と角館町のほぼ中間にある抱返り渓谷は、両岸の険しいがけを挟んで、カエデ、サクラ、アカマツの紅葉が広がる。がけ、川の流れと一体となる紅葉。東北の中で色づくのは遅い方だが、美しさは一番といわれている。
温泉が心地よい季節に
東北地方は名湯の宝庫。冷え込みが始まるこの季節は、紅葉とダブルで楽しめる。 田沢湖の北東、乳頭温泉郷の中で最古の温泉宿、鶴の湯温泉は、泉質、効能の異なる四つの源泉がある。かやぶき屋根の湯治棟や、紅葉を眺められる露天風呂につかると、ゆったりとした時の流れを感じることができる。 八甲田山中で江戸時代から愛されてきた酸ケ湯温泉。総ヒバ造りの大浴場「千人風呂」は、初めて見る人を圧倒させる。四つの源泉があり混浴だが、女性専用時間もある。近くの「まんじゅうふかし」は、服を着たまま木製の腰掛けにまたいで座り、地面から噴き上がる蒸気を浴びる。腰からじんわり暖まるため、「子宝の湯」ともいう。