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2004.4.1(木)更新  民族楽器の旅
 
民族楽器の旅    二胡(中国)  
風わたる草原の響き

 力強く這(は)う。ビブラートを利かせ低くうなる。高くはねる。伸びやかにうたう。二胡(にこ)は、中国の広大な草原を想起させる。
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 そのつややかな響きは、直径8センチほどの小さな胴から生まれる。六角形や八角形の筒の表にはニシキヘビの皮、裏は共鳴音の通り道。黒檀(こくたん)などでできた三味線のような棹(さお)に2本のスチール弦。弦を人さし指と中指で微妙に押さえながら、馬の毛でできた弓を擦る。
「東洋のバイオリン」と呼ばれるが、バイオリンと違うのは、指で押さえた弦を棹に当てないこと。わずか1・5センチほどの空間に弦を浮かし、揺らして、繊細な表現を生み出す。その音色は、人間の声に最も近いといわれている。
 日本の胡弓もまた、似ている。「胡」はペルシャ、中東の意。ただ、胡弓は三弦で、三味線に近い形。奏法も異なる。
   *     *   

 中国の伝統楽器は、進化する。唐の時代に生まれた二胡は、歌劇の伴奏楽器として用いられ、もともと地位は低かった。
 西洋の楽器と同様に扱われるようになったのは、1920年代に多くの改良が加えられてからだ。絹やガットの弦はスチールに、本体は大きくなった。音質が変わった。音域が広がり、音量も大きく、音色の強弱も自在になった。ソロの演奏や西洋風のアレンジが可能になり、協奏曲が作られる。
 中国から伝わった日本の雅楽器が、ほぼ原型を保つのと対照的だ。

◆ウェイウェイ・ウー「上海Red」
 斬新なアレンジと演奏で知られる二胡奏者の最新アルバム。スティングの「フラジャイル」、ギタリスト渡辺香津美との共演によるサンタナの「哀愁のヨーロッパ」など、カバー曲も満載。3000円。
 同名ライブを、4月3日(土)、正午と午後4時、横浜市西区南幸1丁目の横浜高島屋6階ばらの特設ステージ(横浜駅)で。先着130席。無料。問い合わせは横浜高島屋(TEL045・311・5111)。

◆賈鵬芳「浪漫 ROMAN」
 賈の最新アルバム=写真。映画「ニュー・シネマ・パラダイス」「海の上のピアニスト」など、エンニオ・モリコーネの映画音楽を二胡で優しく奏でる。2800円。
 同名ライブを、6月11日(金)午後7時、12日(土)と13日(日)、午後5時、東京都渋谷区神宮前1丁目の原宿クエスト(原宿駅)で。6000円。問い合わせは天華音楽(TEL03・5493・0161)。

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◆チェン・ミン「i love−−我聞」
 オリジナル曲のほか、中国映画「春の惑い」のイメージ曲や、松本孝弘(B’z)のアルバムで共演した「恋歌」のカバーなどを収録したアルバム。3000円。
 5月に発売予定の新アルバムに合わせた二胡ライブを以下の2会場で。
 ▼6月23日(水)午後7時、東京・有楽町の東京国際フォーラムホールC(有楽町駅)。5800円。問い合わせはフリップサイド(TEL03・3470・9999)。
 ▼6月25日(金)午後6時半、横浜市中区住吉町4丁目の関内ホール(関内駅)。4500円。問い合わせはKMミュージック(TEL045・201・9999)。いずれも未就学児入場不可。


◆天華二胡学院
 東京都品川区東大井3丁目の天華二胡学院スタジオ(大井町駅)。講師は賈鵬芳、賈鵬新。レベルに応じたグループレッスン。入会金8400円、月2回1万500円。
 4月3日(土)正午、東京都大田区下丸子3丁目の大田区民プラザ(下丸子駅)で生徒による発表会を開催。無料。
 スタジオ内の天華楽器店では、北京から直輸入の二胡を販売。午前11時〜午後8時。(月)休み。なるべく予約を。
 問い合わせは天華音楽(TEL03・5493・0161)。

◆心弦二胡教室
 東京都目黒区目黒本町5丁目の心弦二胡スタジオ(武蔵小山駅、TEL・FAX03・3712・2618)。講師はウェイウェイ・ウーら。レベル別のグループレッスン。年2回のペースで定期演奏会も。入会金1万5000円、月2回1万2000円。


◆数字譜
 二胡の練習、演奏では、五線譜ではなく、「ドレミ……」を「123……」と表示する「数字譜」を使用する。楽譜が読めない人でも慣れれば簡単に読めるようになる。

◆弱音器
 家での練習は、近所への音の影響が気になるという人も多いはず。本体中央の駒をはずして鉛筆をはさむことで音を弱める方法もあるが、音階が少しずれてしまう。東京都北区上十条1丁目の中国屋楽器店(十条駅、TEL03・3909・9997)では、差し込むだけで音をほとんど変えずに弱められるオリジナル商品「シズカチャン」(1029円)を販売している。午前10時〜午後6時。無休。

賈 鵬芳(ジャー・パン・ファン)

伝統音楽を西洋音楽に脱皮
賈 鵬芳(ジャー・パンファン)

奏  毎夜でなくていい。「おやすみなさい」と言える相手がひとりいるだけで、明日をどんなに安心して迎えられることか。
 賈鵬芳の二胡は、そんなことを思わせる。
 8歳の少年に二胡を取らせたのは「毛沢東思想宣伝隊」。人生を選び、切り開く青年時代を文化大革命の嵐にのまれた。
 文革が終わって、政治と音楽が切り離された78年。賈は、中国最大のオーケストラ「中国中央民族楽団」の一員として、プロになる道を得た。時を同じくして二胡が豊かな表現力を持ち得たとき、賈は、表現の場を海外に求める。88年。来日。
 作曲家、服部克久らとの出会いによって地歩を固めた日本での活動。共演者はギターの渡辺香津美、津軽三味線の木下伸市、オカリナの宗次郎ら多岐に及ぶ。西洋のアレンジを加えた響きは、中国の伝統音楽の域を超えている。
 なかでも、CD「翔」に収めた「明日へ」は、賈自身の作曲。何ともか細い、ひとり震える魂のような音色だ。元気はつらつとした曲ではない。しかし、そこに揺れる魂は、自分にとって大切な、守るべきものと向き合わせてくれる。
 貧しい少年時代に、音楽を学ばせようと支えてくれた兄がそばにいたように、「明日へ」を作曲する賈のそばには、兄がいたという。
 あたたかいもの、本当に大切にしなければならないもの、それらを大事に守る気持ちを、二胡を通して感じてほしい、と賈は言う。「弦を押さえる指の揺れ動きは、繊細なものです。しかし、真摯(しんし)な気持ちは、そこに必ず表現されます」

(2004年4月1日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)
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