腹に響く癒やしの音
馬頭琴は「モンゴル人の魂」「草原のチェロ」ともいわれる。棹(さお)の先端には馬の頭の木彫り。遊牧民のモンゴル人にとって、「命」ともいえる馬の姿が刻まれているのが象徴的だ。
日本では、小学校の教科書にも載っている民話「スーホの白い馬」に出てきた楽器と言えば思い浮かぶ人も多いだろう。羊飼いの少年が愛した白い馬が、「ずっとあなたのそばにいられるよう、私の骨や皮、毛を使って楽器を作ってください」と言い残して死んでいく−−これが馬頭琴の始まり、という伝説だ。
実はこの話、中国・内モンゴル自治区に伝わる民話で、モンゴル国では知らない人も多い。
実際には馬のしっぽの毛が弦と弓に使われている。弦は2本。これを馬の毛の弓で擦る。現在は全体が木製だが、以前は牛や羊などの皮も使っていた。
2本の弦は中国の二胡(にこ)と同じだが、音色はかなり異なる。細いスチール弦の二胡が奏でる高音と違い、馬頭琴の低音は力強く、腹に響く。人の声の音域に似て、「癒やしの音」とも言われるほど、心に深く染み入る。
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スーホの話と同様に、馬頭琴にも指使いや音階、楽器の大きさなど地域によって違いがある。1921年のモンゴル独立後、モンゴル民族は二つの国家に分かれ、中ソ対立のあおりや中国の文化大革命などで交流が途絶え、独自の発展を遂げた。比較的交流が自由になった今も、民族の中で、草原にはない「垣根」が巡らされてもいる。
◆スーホの白い馬(写真)

舞台となる大平原が、郷愁をも感じさせる淡いタッチで、横長の画面を生かしてダイナミックに描かれている。読んであげるなら4歳から、自分で読むなら小学校低学年から。大塚勇三・再話。赤羽末吉・絵。A4判変型、オールカラー48ページ、1260円(福音館書店)。
◆チ・ブルグッド「藍」
ブルグッドのファーストアルバム=写真。自身のユニットをそのまま曲名にした「Hemell(ヒメル)」や、父・ボラグとのデュオが聴きものの「スーホーの白い馬」など全11曲。2940円。
上記CDを5人にプレゼントします
応募は5月21日まで

提供
 カルタコム
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◆チ・ボラグ 馬頭琴の世界
6月11日(金)午後7時、東京都西東京市中町1丁目の保谷こもれびホール(保谷駅からバス)。西村和彦(ピアノ)との共演。ボラグの代表的な作品「万馬のとどろき」ほか全14曲。新曲も披露の予定。全席自由3500円。問い合わせはチ・ボラグ音楽事務所(TEL03・5825・7440)。
◆シリンゴル
東京都文京区千石4丁目(巣鴨駅、TEL03・5978・3837)。本格的なモンゴル料理が楽しめる店。メーンとなる羊は丸ごと仕入れ、本場と同様に解体。代表的な骨付き羊肉の塩ゆで「チャンサンマハ」(写真、1500円)を馬乳酒(550円)とともに味わうのがおすすめ。皮もすべて手作りの羊肉蒸しまんじゅう「ボーズ」(6個700円)なども。毎日午後8時から約20分、チ・ボラグさんと一緒にグループ活動をしていたチンゲルトさんが馬頭琴を演奏する。
営業は午後6時〜10時半。不定休。
◆万馬馬頭琴教室
月2回、(日)午後が原則。会場は東京都渋谷区内が主。講師はチ・ブルグッド。5回1万5000円〜2万円。入門、初級、中級のレベル別のグループレッスン。問い合わせはファクスかEメールで。TEL・FAX永瀬征博さん(0424・98・4820、manba_batoukin@hotmail.com)。
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「草原の風」を自分の力に
チ・ブルグット(35)
来日10年。実は「なんとなく」日本に来たが、そこで自民族の楽器の偉大さを知った。様々な音楽に触れて、馬頭琴を客観視できるようになった。日本の観客が真摯(しんし)に評価してくれることにも感銘を受けた。「それが、今の自分の力になっている」
父はチ・ボラグ。中国の人間国宝に当たる国家第一級演奏家という称号を、馬頭琴奏者として初めて得た第一人者だ。
「一番はずっと父。越えられるとも思っていない」と答える裏には、日本で新しいことをやりたい、という思いもある。現在は、ギターの内田充、ピアノの西上和子とのユニット「Hemell(ヒメル)」で、現代的な音作りに取り組んでいる。父が名付けた「ブルグッド」の名は、モンゴル語で「鷹(たか)」の意味。その名前のように、「馬頭琴を持って世界中を飛び回りたい」との思いも強くなっている。
毎年夏には、自分の教室の生徒も引き連れ帰郷。草原でテントを張って合宿をする。練習もするが、一番の目的は「現地の風、人のにおいを感じること」。馬に乗り、草原で生まれた馬頭琴の心を研ぎ澄ます。
エール お守りです
旭天鵬関
演奏はしませんが、自宅に馬頭琴を飾っています。モンゴルにいるときは洋楽ばかり聴いていたのに、不思議だな、日本に来たら、あの音が聴きたくなった。落ち着くし、ジーンとするんです。イライラしたり、物事を考えたりするときに、特に聴くかな。自分にとっての「癒やし」の音楽ですね。相撲前は、寂しくなっちゃうから聴きません。
これまでのコラム
●二胡(中国) 賈 鵬芳(ジャー・パンファン)
●タブラ(インド) 吉見 征樹
●バグパイプ(イギリス) 山根 篤
●ケーナ(ペルー) 田中 健
●ジェンベ(マリ) 池田 正博
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