東西つなぐ自在な音
細いスチールの弦を、か細いばちでたたく。それだけなのに、予想を超える大きな音が鳴り響き驚かされる。
台形の箱や板に横向きに弦を張り、ばちでたたくのが打弦楽器。イランのサントゥールや中国のヤンチン、英米のハンマーダルシマーなど世界各地に仲間を持つ。ツィンバロムは古くからロマ民族が楽団に取り入れてきたが、20世紀初頭に現代の形に改良されて音域も広がった。
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より多くの音を出そうと弦が約130本に増え、大きさも1・5メートル×1メートルほどになった。また1本の弦に複数の駒を立て、何種類も音を出せるようにした。こうしてツィンバロムは、打弦楽器の中でも最も進化した楽器と言われるようになった。
一方、複雑化したためピアノの鍵盤のように音階の順に弦が並んでおらず、演奏は難しくなった。
その音は5オクターブ前後もの音域を持つというが、ピアノと琴の間のような、東洋と西洋を混ぜ合わせた印象の音色が特徴だ。ある時はピアノのような、ある時はハープのような華やかで迫力ある音色は、ばちの使い方一つで、ようやく耳に届くくらいの繊細な音にも変わる。
その変幻自在な音色は、多くの作曲家を魅了し、ツィンバロムのための新曲が、今日も次々と生まれているという。
◆斉藤浩「Csardas−−クラシックツィンバロンによる名曲集」
クラシック曲を中心に、坂本龍一の「ラスト・エンペラー」なども加えた幅広い選曲でツィンバロムの魅力を伝える=写真。2100円。ハルモニアミュージック(TEL03・3416・1538)で取り扱う。
◆斉藤浩コンサート情報
▼「ハンガリー音楽の夕べ」=5月22日(土)午後7時、大阪市中央区東心斎橋1丁目の島之内教会(心斎橋駅)。2000円。問い合わせは中野さん(TEL06・6336・9851)。
▼「斉藤浩ツィンバロンコンサート」=24日(月)午後7時、神戸市中央区磯上通4丁目のクリスチャンセンター(三宮駅、TEL078・252・1966)。1000円。
▼「ハンガリー音楽の夕べ」=27日(木)午後7時、岐阜県高山市千島町の飛騨芸術堂(高山駅より車)。2000円、高校生以下1000円。問い合わせは中野さん(TEL0577・33・5453)。
▼「八幡市民オーケストラ定期演奏会」=30日(日)午後2時、京都府八幡市八幡高畑の市文化センター大ホール(八幡市駅よりバス)。1200円。問い合わせは野口さん(TEL090・2286・2110)。
▼「アトリウムコンサート−−JUN」=6月6日(日)午後2時、滋賀県栗東市綣2丁目の栗東芸術文化会館さきら(栗東駅、TEL077・551・1455)。入場無料。
▼「堺市音楽団定期演奏会」=6月20日(日)午後2時、堺市桃山台の市立栂文化会館(栂・美木多駅)。入場無料。問い合わせは松本さん(TEL090・4275・8355)。
◆ハンガリーのワイン
東京都中央区日本橋1丁目のCOREDO日本橋3階「セレンディピティ」(日本橋駅、TEL03・5205・0011)では、常時15種前後のハンガリーワインを販売。1575円から。
◆レストラン ジョルナイ
東京都港区西麻布3丁目(六本木駅、TEL03・5775・0071)。ハンガリー人シェフによる本格的なハンガリー料理を、ハンガリーの名窯ジョルナイの食器で味わえる。代表的な料理「チキンパプリカ」(写真、2000円)ほか。ハンガリー人による生演奏のイベントも(不定期)。
営業時間は正午〜午後2時(ラストオーダー)、午後6時〜9時半(同)。ランチは要予約。(日)(祝)休み。
◆調弦
ツィンバロムは繊細な楽器で、気温の変化や湿気に弱く、音が狂いやすい。オーケストラで出番を待つ間、布団を掛けて気温の変化を防ぐこともあるという。
◆ハーリ・ヤーノシュ
伝説のほら吹き男、ハーリ・ヤーノシュを主人公にしたハンガリーの国民的オペラ。ツィンバロムの演奏が効果的に使われている。オペラから6曲を抜粋した組曲も。作曲はコダーイ。
◆日本打弦楽器協会
同会(プロフェッショナル・パーカッション内、TEL03・3314・6811、(月)〜(土)、午前10時〜午後5時、http://jp.cimbalom.org/)では、打弦楽器のコンサートなどを開催するほか、希望者には教師の紹介もしている。現在会員募集中。
「打弦楽器ジャーナル」最新号を100人に。
はがきに住所、氏名を記し、「マリオン」と書いて、郵便番号164・0003東京都中野区中野2の3の3の505日本打弦楽器協会事務局長・石井さんまで。5月27日必着。抽選。
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伝統や生活知り、音に生かす
斉藤 浩(34)
ハンガリーとの付き合いは12年。マジャール語を話し、地元の仲間と酒も飲めば議論もする。音楽に息づく人々の心を、ようやく理解し始めたと感じている。
子供の頃からピアノを習っていたが、テレビで見た打弦楽器に興味を持った。大学でサントゥールを学び、イランへ留学するつもりが湾岸戦争で断念。途方に暮れたところにツィンバロムを知りブダペストに渡った。
初めて見て仰天した。弦の数と複雑な作りに、これまでの打弦楽器とは「チェロと三味線とギターくらい違う」と思った。
日本と行き来しながら腕を磨き、5年後にプロデビューを果たしたが、物足りなさを感じた。ハンガリーの音楽は、詩と密接に結びついている。伝統や生活を知らずに、本当の意味で演奏することができるだろうか。
ハンガリーにどっぷりつかろうと、2年前から長期留学中だ。演奏活動を続けつつ作曲もこなす。新作は、日本と似た音階を持つハンガリー人の共感を呼び、高く評価された。
固有の打弦楽器のない日本で、ツィンバロムをより多くの人に聴いてもらうのが、2年後に帰国を控えた斉藤の願いだ。
エール 柔らかな音色
タケカワユキヒデさん
ツィンバロムの音色を最初に聴いたのはいつ頃だったか。
同じ打弦楽器の仲間、イランのサントゥールや中国のヤンチンの音が鋭角的なのに比べて、とても深い、柔らかい音色だった。
そして、そんなに速く演奏しなくてもいいじゃないかと言いたくなるほどの細かく速い演奏。明るくて勢いのある、天真らんまんな楽器だ。
これまでのコラム
●二胡(中国) 賈 鵬芳(ジャー・パンファン)
●タブラ(インド) 吉見 征樹
●バグパイプ(イギリス) 山根 篤
●ケーナ(ペルー) 田中 健
●ジェンベ(マリ) 池田 正博
●馬頭琴(モンゴル) チ・ブルグット
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