自然の恵みを音にして
木製の巨大なラッパが奏でるのびやかな音色は、金管と木管の融合を思わせる。アルプスの酪農家たちが発明した生活の智恵は、やがてスイスを象徴する国民的な楽器となった。
牧童が谷間に向けて吹き鳴らすアルプホルンの音に、遠くに散らばる牛や羊、牧羊犬は聞き耳を立てた。乳搾り前の牛を和ませる旋律や、日暮れ時を知らせる音色を彼らは使い分けた。雪で曲がった木の根元の形を生かした素朴な楽器は、父から息子へと受け継がれる仕事道具でもあったのだ。
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その起源は2000年前とも言われるが、「楽器」として認められたのは新しい。19世紀後半、仕事にあぶれた酪農家が流しの演奏をしたり、ブラームスがその旋律を楽曲に取り入れたりした頃から、徐々に楽器として定着し始めたという。
構造は、まっすぐ伸びた木管の先端が大きく曲がり、直径20センチほどのベル(音の出口)になる。長さによって音の高さや音色が変わるが、一本では10個の音しか出ないので、演奏する時は合奏が基本だ。
音程を決めるバルブや指穴がないため、音を出すのは奏者の唇の動きと音感が頼り。唇を両端に引いて穴を小さくすれば高い音、唇を柔らかくして穴を大きくすれば低い音が出る。
自然を敬う気持ちから生まれたアルプホルン。温かみのあるその音色は、聴衆のみならず奏者をも癒やしているに違いない。
◆玉川アルプホルンクラブ
楽器作りと演奏を学べる。毎週(土)、神奈川県厚木市の玉川公民館(愛甲石田駅)で活動。午前中は製作(費用は楽器1本で2万5000円程度、工具は一部自己負担)、午後は練習。年会費1000円。詳細は同クラブ(http://cherry.ayu.ne.jp/user/tahc/)。
アルプホルンの設計図をプレゼント。返信用切手270円分を同封し郵便番号243・0121厚木市七沢1303、中川さんまで。6月24日必着。
◆「スイスの民族音楽−−エアメールシリーズ」(写真)
祭りで演奏される舞曲や牧童が奏でる小曲など、村人の生活から生まれた素朴な音楽を集めた。アルプホルン、カウベル、チターほかアルプスに伝わる様々な楽器の音色を楽しめる=写真。1575円、カルタコム(TEL03・3776・1080、http://www.culta.com/)で買うと1500円。
 カルタコム
◆玉川アルプホルンクラブの公演情報
「厚木サマーフェスティバル」=7月30日(金)午後1時、神奈川県厚木市の市文化会館(本厚木駅)。無料▼「厚木市 鮎(あゆ)まつり」=8月7日(土)午後1時と3時、厚木市中町2丁目のロイヤルパークホテル前広場(本厚木駅)。無料。
その他の予定は問い合わせを(junen-ah-bp@nifty.com)。演奏依頼も受け付ける。
◆東京スイスイン
東京都港区東麻布1丁目(赤羽橋駅、TEL03・3588・8708)。コクのあるスイスチーズを溶かし、ジャガイモやカボチャにかけて食べる「ラクレット」(写真、ディナーのみ、1000円)は、良く冷えた白ワインとの相性も抜群だ。スイスワイン5種のほか、洋梨入りの酒などドリンク類も豊富。営業時間は午前11時半〜午後2時、午後5時半〜10時((土)(祝)はディナーのみ)。(日)休み。要予約。
◆「文化交流サロン&カルチュアクラブ−−スイス」
7月1日(木)、午後6時半〜9時、東京都千代田区紀尾井町の赤坂プリンスホテル・クリスタルパレス(赤坂見附駅、TEL03・3234・1111)。30種以上のスイス料理とワインをビュッフェ形式で。スイス大使を招き、同国の魅力を音楽と映像で紹介する。1万5000円(サービス料込み)。要予約。
◆間伐材を利用した商品
玉川アルプホルンクラブでは間伐材で楽器を作っている。間伐とは、建材として使えるまっすぐな木を育てるため、曲がった木や成長の悪い木を間引くこと。間引かれた木(間伐材)を利用したアイデア商品が、近年注目を集めている。「畳付きヒノキ縁台」(甲賀郡森林組合、http://www.koka-shinrin.or.jp/annai/index.html)や、「間伐材封筒」(NPOレインボー、http://www.rainbow.gr.jp/FUTOH/1.htm)ほか。
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楽器作りの楽しさ共有
玉川アルプホルンクラブ
「山の話が分かる」。玉川アルプホルンクラブの入会条件だ。
山で自分の楽器を探し、世界でたった一つの楽器を作る。それがこの会の最大の特色。その時間は半年から一年。型紙を手に森へ入り、根曲がりの木を探して伐採する。チェーンソーで大まかな形にくり抜き、カンナと彫刻刀でひたすら削る。
最小でも全長3メートル以上の長大な楽器だ。気の遠くなるような作業だが、木材に命を吹き込むことに夢中になれる人たちはどこか違う。ヒノキの香りを楽しみ、ノミをたたくリズムにわくわくする。最難関のベルの部分では、熱中しすぎて腕を痛める人も少なくない。
が、そうした苦労を経ているからこそ、ひとたび楽器を手にし、演奏を始めると、まるで一本の楽器で吹いているかのような絶妙のハーモニーを作り出す。音と心が溶け合い、深く響き渡る音色が聴く者を圧倒する。
89年に16人で始めたクラブも、今では80人の大所帯だ。15年の間に、日本各地や韓国の友人たちにも製作指導をしてきた。いまも神奈川県や長野県で弟子たちが活動を続けている。
エール 機上の演奏会
ジャック・ルヴェルダン駐日スイス大使
山々や渓谷にこだまするアルプホルンの音色は、人々の感動を呼び起こします。スイス人奏者もよく来日しますが、最近ではスイス航空チューリヒ〜東京間の機内で即興演奏会が開かれました。同乗していたパーサーの話では、史上最も高所で行われた演奏会に、乗客の皆様は感銘を受けられたとのことです。
これまでのコラム
●二胡(中国) 賈 鵬芳(ジャー・パンファン)
●タブラ(インド) 吉見 征樹
●バグパイプ(イギリス) 山根 篤
●ケーナ(ペルー) 田中 健
●ジェンベ(マリ) 池田 正博
●馬頭琴(モンゴル) チ・ブルグット
●ツィンバロム(ハンガリー) 斉藤 浩
●古筝(中国) 伍芳(ウー・ファン)
●ウクレレ(米国) 高木ブー
●津軽三味線(日本) 上妻宏光
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