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2005.1.13(木)更新  民族楽器の旅
 
民族楽器の旅 コカリナ(ハンガリー)
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木の精霊が音に宿り

 思わず「オカリナ?」と聞き返したくなる。長さ8センチ、直径3センチほどの、手にすっぽり収まる小さな木製の楽器。六つの指穴と、リップと呼ばれる音を出すための四角い穴だけのシンプルな構造だ。東欧のハンガリーで産声を上げ、日本で「コカリナ」と名付けられた。
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 現在の形になったのは数十年前。歴史は浅いが、「木でオカリナを」とハンガリーの民族楽器製作者が伝統と知恵を集結させて作り上げた。フルートなどと違い、木をくりぬいた閉管楽器なので、吹き込んだ空気が中で共鳴し、ふんわり外に広がっていく柔らかい音がする。牛乳瓶に息を吹き込むと「ボォー」と鳴るような感じだ。音色は「木」そのもの。野山で吹くと、鳥たちが一緒に鳴き始めるという。木の精霊が宿っているかのような、心を癒やす不思議な力を持つ。

   *     *   

地図

 音階は1オクターブ以上。バスやバリトンコカリナが作られるなど、黒坂黒太郎さんらによって日本で「楽器」として完成、世界に羽ばたこうとしている。

 素材となる木によって音が違う。原爆で焼け焦げた被爆樹、廃校になった学校や取り壊す家の柱などで作ったコカリナもある。平和を願う音、思い出の詰まった音。木に刻まれた歴史が音となって出てくるようだ。木の精霊たちの仕業だろうか。形を変え、木は生き続ける。

 


◆早川りさこ&黒坂黒太郎「明日は味方 グランドハープ&コカリナ」(写真)
 NHK交響楽団のハープ奏者・早川さんと黒坂さんによるハープとコカリナの初コラボレーションCD。新潟県中越地震被災者支援を目的に制作、収益金は被災者支援に活用される。「ふるさと」など、癒やしと励ましをテーマに選曲。全16曲。2000円。購入は、中越音楽支援プロジェクトのホームページ内にあるCD案内(http://cyuetsu.com/asumikata.htm)から。試聴もできる。

◆黒坂黒太郎「翠嵐(すいらん)」(写真)
 アイルランド民謡「ダニーボーイ」など全11曲。コカリナ用にアレンジした楽曲を、ギターやピアノ、ハーモニカなどとともに。屋久杉をはじめ、クルミ、桜、柿などの木で作ったコカリナで演奏。屋久杉数千年の響きが心を癒やす。3000円。

◆中越地震被災地支援「グランドハープとコカリナのコンサート」
 3月2日(水)午後7時、東京都千代田区神田駿河台1丁目の日大カザルスホール(御茶ノ水駅)。早川りさこさんと黒坂さんが出演。童謡「どこかで春が」、黒坂さん作曲による「母なる川」など。3800円。要予約。問い合わせは黒坂音楽工房(TEL03・5626・1581)。


◆レストラン カントリー
 東京都目黒区自由が丘1丁目の自由が丘デパート3階(自由が丘駅、TEL03・3717・4790)。ハンガリー大使館の職員や留学生も訪れるというアットホームなレストラン。開店は1959年。牛肉をパプリカで煮込んだ「グヤーシュスープ」(写真下、1180円)をはじめ、チキンシチューやロールキャベツなど伝統的な家庭料理を味わえる。エグリやトカイのワインも。午前11時半〜午後10時。(水)休み。


◆コカリナを吹こう
 簡単に吹け、軽くてポケットにも入るコカリナ。コカリナ楽器(TEL03・5626・1581、http://www.kocarina.net/)や一部の楽器店で、日本コカリナ協会認定製作者が作ったコカリナを販売。5775円から。思い出の木でオーダーすることも(20本以上からの受け付け)。  コカリナとの出会いなどをつづった黒坂さんのエッセー「コカリナ?」(CD付き、講談社)も販売中。1680円。

黒坂 黒太郎

心の雪解け、被災者に贈る
黒坂 黒太郎(55)

奏  95年、黒坂音楽工房の机の上に、見たことのない笛が置いてあった。「ハンガリーのお土産」と知人がくれた笛。それが「コカリナ」との出会いだ。

 「木の精が歌っている」

 音色に魅せられ、日本で作れないかと知人の木工職人たちに依頼した。彼らは「簡単だよ、こんなの」と請け合ったが、しばらくすると「形は似せられるが音が出ない」と音を上げた。

 96年、音の出る秘密を学ぶためハンガリーに飛び、ブダペスト郊外の職人の家に押し掛けた。地球の反対側からきた日本人に感激した職人は、指穴の大きさが重要だと教えてくれた。黒坂は、この笛に「コカリナ」と名付けていいかと尋ねた。「木(こ)のオカリナ」という意味を込めて。

 98年、長野オリンピック。会場整備で伐採される運命にあった木でコカリナを作り、地元の子どもたちに贈った。

 昨年12月、仲間とともに、新潟中越地震の被災者にコカリナのCD2000枚を贈った。震災の恐怖から眠れないでいる子どもやお年寄りたちにコカリナの音色を届けたかったからだ。太陽が雪を溶かすように、木の音色が心を温め、溶かしてくれることを願い……。


エール 森林浴のよう

ジャーナリスト・筑紫哲也さん
 ここまで演奏用の楽器に高めたのは黒坂さんの功績。工夫を重ね、試行錯誤を繰り返してきた。用いる木の材質でこんなに音色に変化が出るものかと驚く。しかし、木の優しさ、懐かしさでは共通していて、音による森林浴をしているような気分にしてくれる。木という自然に人間が働きかけて、こんな交歓ができるというのがコカリナの、そして黒坂さんの魅力だ。

 これまでのコラム
 
●二胡(中国) 賈 鵬芳(ジャー・パンファン)
 ●タブラ(インド) 吉見 征樹
 ●バグパイプ(イギリス) 山根 篤
 ●ケーナ(ペルー) 田中 健
 ●ジェンベ(マリ) 池田 正博
 ●馬頭琴(モンゴル) チ・ブルグット
 ●ツィンバロム(ハンガリー) 斉藤 浩
 ●古筝(中国) 伍芳(ウー・ファン)
 ●ウクレレ(米国) 高木ブー
 ●津軽三味線(日本) 上妻宏光
 ●アルプホルン(スイス) 玉川アルプホルンクラブ
 ●アルパ(パラグアイ) 上松 美香
 ●ディジュリ ドゥ(オーストラリア) 哲J
 ●ビリンバウ(ブラジル) 丸山祐一郎
 ●ウード(チュニジア) 常味 裕司
 ●マラカス(キューバ) BON−BON BLANCO
 ●ジェゴグ(インドネシア) スアール・アグン
 ●チャング(朝鮮半島) 康明洙
 ●スチールドラム(トリニダードトバゴ) カリビアン・マジック・スティール・ドラム・オーケストラ
 ●カンテレ(フィンランド) はざた雅子
 ●マリンバ(グアテマラ) 小竹 満里
 ●バンドネオン (アルゼンチン) 小松 亮太
 ●ドンブラ (カザフスタン) アイティムラティ・トルハリ
 ●尺八 (日本) 金子 朋沐枝
 ●タンバリン (イタリア) アルフィオ・アンティコ
 ●シタール (インド) 若林 忠宏
 ●ハルダンゲルバイオリン(ノルウェー) 山瀬 理桜
 ●ひょうたん笛(中国) 伊藤 悟
 ●オカリナ(イタリア) 宗次郎
 ●中国琵琶(中国) ウェイ・ウォン
 ●ダルブッカ(エジプト) 伊藤 アツ志
 ●バラライカ(ロシア) エフゲニー・ジェリンスキー
 ●三線(日本) よなは 徹
 ●パンフルート(ルーマニア) 野崎ユミカ
 ●カリンバ(タンザニア) ロビン・ロイド

(2005年1月13日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)
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