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2005.1.27(木)更新  民族楽器の旅
 
民族楽器の旅 ムックリ(日本)
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森羅万象のカムイ尊び

 ビヨーンビヨーンと水が滴るように響き渡る不思議な音色。
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 15センチほどの長さの竹片でできたアイヌ民族の口琴・ムックリ。昔は木や動物の骨を素材にしていたともいうが、本州との交易から、やがて本州産の竹を用いる今日の姿になった。

 竹片の中央に切り込みを入れ、長い舌のような形にして根元にひもを通す。半開きにした口の前でひもを引っ張って弁を振動させる。すると不思議、振動音が口内で共鳴し、想像を超える豊かで深みのある音が生まれる。自らの口を楽器にするのだが、続けて音を出すには熟練を要する。舌の動きや口の開閉、呼吸法で音色を変え、強弱をつける。奏者によって音色は千差万別。音を聞くだけで誰が演奏しているのかがすぐに分かるという。女性のための独奏楽器とされ、男性とのあいびきの連絡に奏でられたというロマンチックな逸話も残る。

 メロディーを伴う曲ではなく、雨だれや鳥の鳴き声といった自然界の情景を音で描写する。古来、カムイ(神)の宿る自然を尊び、共存してきたアイヌ民族。自然との交感を導くムックリは、その精神そのものだ。


◆「ムックリの響き−−アイヌ民族の口琴と歌」(写真)
 弟子らアイヌ民族の女性7人による、伝統的なムックリの演奏とウポポ(歌)を収録。弟子の代表作「親熊と子熊」や、熊送りなどの儀式で歌われるウポポなど、全31曲。3000円。問い合わせは日本口琴協会(TEL048・771・5092)。
上記CDを5人にプレゼントします
応募は2月3日まで

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世界の民族音楽CD
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◆安東ウメ子「ウポポ サンケ」(写真)
 04年7月にその才能を惜しまれつつも亡くなった、ウポポとムックリの名手・安東の遺作アルバム。リズムと即興性を重視した、おおらかな音楽性が心地よい一枚。伝統的弦楽器トンコリ奏者のOKIがプロデュース。全14曲。2940円。問い合わせはチカルスタジオ(TEL03・5459・3323)。


◆公開講座「ムックリに挑戦」
 2月3日、17日、3月3日、17日の木、午後6時半、東京・西新宿の朝日カルチャーセンター(新宿駅、TEL03・3344・1998)。日本口琴協会代表の直川礼緒さんが講師。基本音の出し方から、様々な演奏技法まで実技指導。全4回1万3440円。会場ではムックリ(500円)の販売も。

◆ムックリ作り
 2月13日、20日、3月13日の日、午後1時半、東京都板橋区赤塚5丁目の区立郷土資料館(西高島平駅、TEL03・5998・0081)。関東在住のアイヌ民族の人々を講師に招いて、ムックリの制作。当日午後0時半〜、整理券を配布。各回先着20人。無料。
 同館では、2月5日(土)〜3月13日、企画展「樺太アイヌ民族誌−−工芸に見る技と匠(たくみ)」を開催。(月)休み。


◆アイヌ料理店「レラ・チセ」アイヌ料理店「レラ・チセ」
 東京都中野区新井1丁目(中野駅、TEL03・3387・2252)。アイヌ語で「風の家」の意味。鹿肉のステーキ(写真中央、900円)やムニニイモ(同左、700円)、ギョウジャニンニクのおひたし(同右、650円)など、北海道から材料を取り寄せた伝統的なアイヌ料理を楽しめる。ムニニイモは凍結したジャガイモを発酵させ、すりつぶした粉で作る団子。素朴な香ばしさがあとをひくおいしさ。月一度、アイヌ語講座も開講(要予約)。午後6時〜11時ラストオーダー。(月)休み。


◆アイヌ文化交流センター
 東京都中央区八重洲2丁目(東京駅、TEL03・3245・9831)。アイヌ民族の文化普及を目指し97年に開館。アイヌ民族に関する図書、資料、映像など約3千点を閲覧できる。開館時間は午後1時〜9時((土)(祝)は午前10時〜午後6時)。(日)(月)((祝)を除く)、(祝)の翌日休み。

弟子 シギ子

先祖の文化掘り起こすべく
弟子(てし) シギ子(73)

奏  北海道・屈斜路湖畔のコタン(集落)で育った。祖父母たちが夜中に集って語るアイヌ語の叙事詩を、障子越しにこっそり聞くのが楽しみだった。明治政府に始まった同化政策のため、アイヌ民族の言語、文化は厳しく禁じられていた。日本語は話せても、読み書きは出来なかった祖父母たち。アイヌ語を教えてくれとせがんでも、返ってくる言葉はいつも同じ。「そんなことより学校の勉強をして、手紙の書ける偉い人になりなさい」。ムックリも見たことはなかった。

 阿寒湖畔のコタンで民芸品店を開くようになった40歳ごろ、はじめてムックリを手にする。店先で観光客相手に実演したのがきっかけだった。「自分のやり方で自由に弾ける点に魅せられ」、夢中になって音を探った。次第に腕を上げ、91年、ロシア・サハ共和国で開催された国際口琴大会に参加。帰国後は、大会で学んだ世界の技法を取り入れ、より表情豊かな奏法に変わった。01年にはCDを制作、ウポポ(歌)にも初めて取り組む。次々と未知に挑戦していく、その活力。「何も分からないから、怖いもの知らずなのよ」と朗らかに笑う。

 「埋もれてしまった先祖たちの文化を出来る限り掘り起こしたい」。子孫を守るため、祖父母たちが教えるのを拒んだアイヌ語を、今勉強している。


エール 素朴な奥深さ

二風谷アイヌ資料館館長・萱野茂さん
 一時期、ムックリを制作していました。自分で作って、すぐに試しに鳴らしてみる。ちゃんと音が鳴ると嬉しくてね。竹に切り込みを入れ、ひもを通しただけの単純な作りなのに、どうしてあんなに複雑で不思議な音が出るのか。自分の体を共鳴板にすることで、それぞれの個性が音に反映される。とても奥深い楽器です。資料館でも、ムックリをはじめ世界十数カ国の口琴を展示しています。

 これまでのコラム
 
●二胡(中国) 賈 鵬芳(ジャー・パンファン)
 ●タブラ(インド) 吉見 征樹
 ●バグパイプ(イギリス) 山根 篤
 ●ケーナ(ペルー) 田中 健
 ●ジェンベ(マリ) 池田 正博
 ●馬頭琴(モンゴル) チ・ブルグット
 ●ツィンバロム(ハンガリー) 斉藤 浩
 ●古筝(中国) 伍芳(ウー・ファン)
 ●ウクレレ(米国) 高木ブー
 ●津軽三味線(日本) 上妻宏光
 ●アルプホルン(スイス) 玉川アルプホルンクラブ
 ●アルパ(パラグアイ) 上松 美香
 ●ディジュリ ドゥ(オーストラリア) 哲J
 ●ビリンバウ(ブラジル) 丸山祐一郎
 ●ウード(チュニジア) 常味 裕司
 ●マラカス(キューバ) BON−BON BLANCO
 ●ジェゴグ(インドネシア) スアール・アグン
 ●チャング(朝鮮半島) 康明洙
 ●スチールドラム(トリニダードトバゴ) カリビアン・マジック・スティール・ドラム・オーケストラ
 ●カンテレ(フィンランド) はざた雅子
 ●マリンバ(グアテマラ) 小竹 満里
 ●バンドネオン (アルゼンチン) 小松 亮太
 ●ドンブラ (カザフスタン) アイティムラティ・トルハリ
 ●尺八 (日本) 金子 朋沐枝
 ●タンバリン (イタリア) アルフィオ・アンティコ
 ●シタール (インド) 若林 忠宏
 ●ハルダンゲルバイオリン(ノルウェー) 山瀬 理桜
 ●ひょうたん笛(中国) 伊藤 悟
 ●オカリナ(イタリア) 宗次郎
 ●中国琵琶(中国) ウェイ・ウォン
 ●ダルブッカ(エジプト) 伊藤 アツ志
 ●バラライカ(ロシア) エフゲニー・ジェリンスキー
 ●三線(日本) よなは 徹
 ●パンフルート(ルーマニア) 野崎ユミカ
 ●カリンバ(タンザニア) ロビン・ロイド
 ●コカリナ(ハンガリー) 黒坂 黒太郎
 ●バンスリ(ネパール) インドラ・グルン

(2005年1月27日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)
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