
「トイレに忍者、いないよね」。男の子が不安そうに辺りを見回す。
江戸時代の町並みを再現したテーマパーク「日光江戸村」の一角にある「忍びの里」は、うっそうと竹が茂り、いかにも忍者が息を潜めていそうだ。四方を木板で囲まれた「忍者からくり間道」で迷い、急斜面に建つ「忍者怪怪亭」では真っすぐ立っていられないほど平衡感覚を失う。時折、その中を縦横無尽に行き来する黒い影が横切る。忍者である。
「本物の忍者が一番に求められたのは『冷静さ』だそうです」。18歳の時から忍者役を演じる大北晋平さん(33)=写真=は、闘うことの意味を常に自身に問いかけた彼らの精神に強くひかれる、という。スタントマンを目指して入ったプロダクションで思いもよらず指名された忍者役だったが、先輩の指導や書物を通して彼らの人間らしさも知った。「冷酷非情なイメージをもたれがちですが、基本は情報を得ていかに『逃げる』か。身に危険が迫ったときにしか闘わないのです」
1日4回上演を行う「大忍者劇場」では、幕府の密偵として雇われた忍者と、黒幕の手先となった忍者の壮絶な闘いが繰り広げられる。客席から手を伸ばせば届きそうな舞台上で、城壁をさっそうと駆け登り、時には縄を伝って天井から降り立つ−−。足音一つしない、音の闇が広がる。

《メモ》
【江戸ワンダーランド日光江戸村】栃木県日光市柄倉(鬼怒川温泉駅からバス)。午前9時半〜午後4時(季節で異なる)。(水)休み。忍びの里のほか、宿場町や武家屋敷町など。4500円、小学生2300円。お問い合わせ先は0288・77・1777。