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2008.1.8(火)更新  よくばり湯の旅


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お湯の加減は潮がする 地鉈温泉(東京都)
地鉈温泉
 地鉈温泉には満潮の頃、「温泉友だち」という島の人がやって来た
地鉈温泉
日の出も楽しめる松が下雅湯=いずれも東京都新島村式根島で
 東京の南160キロに浮かぶ式根島。空路に海路、新島経由で、はるばるやって来た。が、野伏(のぶし)港を行き交う車はどれも品川ナンバー。そう、ここも東京なのだ。

 周囲12キロの島には、火山の営みがそこかしこに色濃く残る。南端に近いリアス式海岸の絶壁に「秘湯地鉈(じなた)」の碑が見えた。

 島へと心がなびいたのは、映画「男はつらいよ 柴又より愛をこめて」を見た5年前。美保純扮するタコ社長の娘が、傷心の旅の果てにたどり着いたのが、ここ地鉈温泉だった。日の傾きかけた湯にそっと滑り込み、彼女の口からもれたのは「うわぁ天国ぅ」。

 その湯船は磯に。岩壁にへばりつく150段の石段を、転げ落ちそうになりながら下りきる。切り立つ左右の壁が、青空に向かいV字を描いていた。「地鉈」の名は、大地を鉈で割ったようなこの地形に由来するという。そして海だ。深い群青の海。

 湯船は、波打ち際の岩礁に点在する潮だまり。底から80度の源泉がわき、流れ込む海水と混ざり合い温度が下がる。入り時は日に2回、満潮の前後2時間ほどだ。

 大小ある潮だまりを巡り、手を入れては適温の場所を探してみるが、「天国」はそうたやすくは見つからない。やがて地元の女性が現れ、小ぶりな湯壺(ゆつぼ)につかり「ここがいいわよ」と助け舟を出してくれた。鉄さび色の湯は芯から温まる。「夜がまたいい。今夜あたり、星空に細い月が懸かるかも」

 夕食後、頼りは懐中電灯。月に誘われ「天国」への階段を再び下りていった。

 文  尾島聡
 撮影 上田頴人


 ◎地鉈温泉 式根島の露天風呂は三つ。「内科の湯」として親しまれ、胃腸病などに効く地鉈温泉のほか、別名「外科の湯」の足付(あしつき)温泉、ただひとつ人工の松が下雅湯温泉。足付温泉は「式根松島」とも呼ばれ、風呂からは日の出が拝める。3施設とも入浴は水着着用、24時間無料。

 ◎憩いの家 島で唯一の屋内温泉施設。200円、小学生100円。午前10時〜午後10時、(月)休み。

 ◎湯加減の穴 地鉈温泉に向かう道端の石垣に、ローマの「真実の口」のようにぽっかり口を開ける。手を入れると、かかる蒸気の温かさで温泉の湯加減がわかるという趣向。

 ◎カンビキ山 新東京百景の一つ。標高99メートルの山頂にパノラマ式展望台があり、伊豆諸島、富士山が見渡せる。
 【問い合わせ】問い合わせは式根島観光協会(04992・7・0170)


 【所在地】
  新島村式根島

 【交通】
  式根島へは、調布空港から新島空港まで約40分。新島港から連絡船で約10分。
  東京の竹芝桟橋から高速船と大型船の直航便も。

 【泉質】
  塩化物泉

地鉈温泉アクセス

(2008年1月8日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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