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2008.4.1(火)更新  よくばり湯の旅


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春告げる阿蘇の野焼き 久木野温泉
(熊本県)
久木野温泉
山すそが一気に燃え上がる
久木野温泉
阿蘇の山々を望む木の香の湯=いずれも熊本県南阿蘇村で
 阿蘇は火の国である。世界最大級のカルデラの中心に座す中岳は時に火柱を噴き灰を降らせる。荒ぶる山を人々は古来あがめてきた。冬が終わる頃、この火の山を人が放った炎が包む。

 南阿蘇村長陽地区の野焼きに同行させてもらった。集落から40人近くが参加し、点火役や火消し役に分かれて整然と動く。

 「火ぃ付けい。ちょうど下から風が吹いとっと」

 かけ声とともに、枯れススキやカヤにライターの火が移された。ばちばちと音を立てて一気に燃え上がる。熱気で顔がほてる。そよと吹いた風にあおられた炎がうなりをあげて走る。火に巻かれそうな気がして、へっぴり腰で煙から逃げた。

 山の上から下へ。2時間余りで約50ヘクタールを黒こげにした。「この灰から芽吹く頃がほんなこつきれいとよ」。一息ついた男性が笑った。2万4千ヘクタールに及ぶ阿蘇の草原は放置すればやがてヤブになる。森林化を防ぎ害虫を駆除する野焼きという人為で保たれてきた。山野を焼く猛火は再生の炎でもあるのだった。

 阿蘇は豊かな湧水(ゆうすい)の国でもあり、いで湯もまた多い。谷を隔てた南側の久木野温泉「木の香湯」に足を運んだ。やわらかい湯に手足を伸ばす。いぶされた体が清められてゆく。

 どこかで野焼きは続いているようだ。山をのみ込むかと思えた炎も、遠望すればわずかにすそ野をちりちり焦がすばかりだ。まどかな阿蘇の山々はゆるぎなく、火口からはき出された噴煙は、意思を持つ塊のように立ち上り、雲に溶けていった。

 文  古沢範英
 


 ◎久木野温泉 旧久木野村に旅館3軒、ホテル1軒などが点在。公共の温泉施設「木の香湯」は大人(中学生以上)400円。毎月26日はお風呂の日として、第2浴場で季節の湯(バラ湯やみかん湯)を開催している。問い合わせは(0967・67・2332)。

 ◎野焼き 2〜4月にかけて阿蘇各地の牧草地などで行われる。輪地と呼ばれる防火帯をつくるため、夏から秋にかけて草を刈って備える。南阿蘇村では、夜峰山南斜面の東下田地区で6日午前9時ごろから約36ヘクタールを焼く予定。問い合わせは村産業振興課(0967・62・9112)。

 ◎阿蘇山 根子、高、中、烏帽子、杵島の阿蘇五岳の総称。南北24キロ、東西18キロ、周囲128キロに及ぶ外輪山に囲まれた、世界最大級の陥没カルデラの内側で約5万人が生活している。山開きは夜峰山が4月29日、烏帽子岳が5月11日の予定。


 【所在地】
  南阿蘇村河陰

 【アクセス】
  南阿蘇鉄道長陽駅よりタクシーで約5分。熊本空港から車で約30分。

 【泉質】
  硫酸塩泉(木の香湯)

久木野温泉アクセス

(2008年4月1日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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