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2008.4.22(火)更新  よくばり湯の旅

日本一のもてなしを体感 和倉温泉
(石川県)
和倉温泉
さち子さん(左端)の指導を受ける新人達
和倉温泉
七尾西湾を望める露天風呂=いずれも七尾市、垣内博撮影
 「心配りを忘れちゃだめよ」。ぎこちない動きの私を、客室係経験25年のさち子さん(67)が励ましてくれる。「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で28年連続1位に輝いた加賀屋。支持される理由を知りたくて、新人の接客研修に特別参加した。

 着物を着て、この春入社した6人と、まずあいさつから。正座をして畳に手をつき、上半身を45度折り曲げる。胸高に締めた帯が苦しいが、笑顔を絶やしてはいけない。「指先まですっと伸ばす」「お抹茶は三口半で飲み終えるだけの量に」「ふすまは三手(みて)で開ける」。しなやかな動きを徹底指導されるが、思うようにいかない。

 息つく間もない4時間。足はしびれて感覚がマヒし、着物も着崩れた。そんな私に、さち子さんがきりりと極意を伝える。「大切なのは、何げないやりとりでお客様が何を求めているかを察すること」。毎日9時間の研修は、3カ月間続く。

 客の到着に合わせ、客室係約40人が玄関に整列する様は、壮観。私も加わったが、お辞儀の間合いがずれてしまった。

 総勢200人の客室係には海外出身者もいる。台湾出身の佐和子さん(29)は「ここで求められる細やかな気配りは、日本ならではの文化です」。中女将(おかみ)の長谷川明子さん(44)は「当たり前のことをしているだけ。特別なことは何も」と、つつましやかにほほえむだけだ。

 研修後、露天風呂で「にわか客室係」の緊張をほぐす。眼前に海、その先に奥能登がかすむ。日本の美学を肌で感じた一日。もてなしの心が、少しは身についただろうか。

 文  上原理恵
 


 ◎和倉温泉 開湯1200年とされる。28の宿泊施設の大半が07年の能登半島地震で被災、一時的に営業停止も。

 ◎加賀屋 1906年創業。館内に加賀友禅や輪島塗などの工芸品が飾られる。客室数244。内湯男女各2、露天男女各1。1泊2食付き3万3750円から。2010年、台湾にも開業予定。問い合わせは0767・62・1111。

 ◎プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選 旅行新聞新社主催。全国約1万5千の旅行会社の投票で、もてなし、料理、施設、企画の4部門で選出。加賀屋は総合部門で28年連続の1位。

 ◎ル ミュゼ ドゥ アッシュ 加賀屋そばにあるカフェ併設の美術館。七尾市出身で、世界的に活躍するパティシエ・辻口博啓さんの構想で06年に開館。砂糖で作った芸術作品を展示。中学生以上600円。午前8時〜午後5時(カフェは9時〜7時)。問い合わせは0767・62・4000。


 【所在地】
  七尾市和倉町

 【交通】
  能登空港から車で約45分。最寄りの和倉温泉駅まで、金沢駅から特急で約1時間。

 【泉質】
  塩化物泉

和倉温泉アクセス

(2008年4月22日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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