
お店の看板メニュー、天ぷらそばをいただきました。運ばれてきてまず驚くのは、えび天の大きさ。そばの上に、丼から大幅にはみ出たえび天が2本、どーんと乗っています。ぷりぷりのエビも美味ですが、やはり衣が違います。ほんのりごま油の香りがする衣は、アンケートの回答通り、サクサクしてとても軽い食感。見た目から想像する脂っこさや重さをほとんど感じず、意外とあっさりいただけました。
一方、そばの実の芯のまわりの部分をひいた、白っぽい一番粉で打つそばは、細めでやや淡い色合い。コシもあるのですが、つるつるとしたのどごしの良さが印象的です。そば粉は、新潟県の妙高高原産と北海道産のものをブレンド。重視しているのはのどごしだといいます。
つゆは、一般的な関東風のものより味も色も薄めで、比較的すっきりした味わい。甘さと辛さのバランスがちょうどよく、だしの風味がとても効いていました。そのだしに使われているのが、「焼き節」というもの。本かつお節を火であぶってから削ったもので、すっきりした中にも奥深いコクが出るのが特徴だそうでうす。この「焼き節」、仕入れがとても難しいものなのだとか。
この、天ぷら、そば、つゆが三位一体となって、コクがあるのにすっきり、という尾張屋独特の味わいを生み出しているようです。
「この天ぷらそばをよそで食べようと思ったら2倍3倍の値段はしますよ!」と言うのは、50年以上お店を守り続ける女将(おかみ)の田中登美子さん。ここまで素材を厳選した天ぷらそばを1300円という値段で提供できるのは、良質な食材を手頃に仕入れることができるから。長い間、業者との信頼関係を大事に育んできた老舗(しにせ)だからできることなのでしょう。