「好きな山は」と聞かれ返答に窮することがある。ナントカ山が好きです、と答えたら、カントカ山がひがむんじゃないかと余計な心配をしてしまう。例外は、神津島の天上山。島の山でお隣さんがいないから、気兼ねすることなく「好き」といえる。一昨年、ガイド仲間の三島健悦氏からこの山を教えられた。山名は知っていた。「関東百名山」(山と渓谷社刊)に取り上げられていたからだ。ただ登ったことはなかった。
三島さんは言う。「島の山ですからね。竹芝桟橋から船で行く。ロマンチックだと思いませんか。出航は夜の10時ですよ。すぐには眠れませんからね。缶ビール片手にデッキで潮風に吹かれるのも……」。この話しっぷりに、その気になった。一昨年5月23日の夜、竹芝桟橋を出航。大島、利島、新島、式根島と寄りながらの船旅。神津島には翌朝10時に到着だ。ジェットフォイルだと数時間だが、波が荒いと欠航になるし「旅情がないじゃありませんか」と三島氏。
朝がきた。神津島が大きくなる。スカイラインが天上山なのだろう。たかだか571メートルなのに、海から見上げているためか、高く見える。スカイラインはギザギザして手ごわそうだ。港では、三島さんと仲の良い、村役場の前田正代(まさしろ)氏が出迎えて下さった。
準備を整え、マイクロバスで黒島登山口まで送って頂く。ジグザグに登ってジャスト1時間、スカイラインに立つ。黒島山頂10合目だ。その先はギザギザの稜線(りょうせん)ではなく広い台地。すぐ下に千代(せんだい)池がある。北西に進むと表砂漠。小さいが砂漠だ。東に進むと裏砂漠がある。5月中旬にはオオシマツツジが満開となる。海もおだやかな日が多く、三島さんは5月の天上山を薦めてくれたのだ。空気が澄んでいる時は、富士山が遠望できるという。
台地上で2時間ほど遊び、三角点にタッチしてから白島登山口へと下った。車道をのんびり下って民宿に戻る。前田さんが待ち構えていて、マイクロバスで温泉保養センターへ連れていってくれた。目の前に大きく海の広がる浜辺の露天風呂は最高。海がきれいで、体力に自信のない人は、海と温泉だけでも、島を訪れるかいがあるというものだ。