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うふふナチュラルライフ

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口の中に広がる不思議ワールド    

    個性的な伝統料理「しもつかれ」

イラスト・さかいひろこ
 私の住む栃木県には、2月の初午(はつうま)に『しもつかれ』という郷土料理を作り、赤飯と一緒にお稲荷(いなり)さんにお供えする風習がある。一度、地元の奥さんが作ったのをつまませてもらったことがあるが、たちまち口の中に世にも不思議な味が広がって、私は『しもつかれ』ワールドに迷い込んでしまった。正直言って美味(うま)いのか不味(まず)いのか、なんだかよくわからん。

 自然豊かな日本では、さまざまな食文化が発達した。中には『なれずし』など、個性的過ぎて食べつけない人間には勇気のいる郷土料理も多々あるけれど『しもつかれ』もその一つだと思う。材料は大根、ニンジン、酒かす、油揚げ、大豆、サケの頭。大根とニンジンは『鬼おろし』と呼ばれる、竹でできたごつい道具でおろす。その他は細かく切り、塩、砂糖、しょうゆで味をつけながら煮る。地域によっては酢を入れるところも。材料から察するに、冬の間に蓄えておいた野菜がそろそろ傷みだしたのを見て、もったいないからまとめて食べちゃったのが始まりではないか? うちでも、地面に掘った穴に保管してある野菜がそんな具合になるころだ。サケの頭は新巻きの残りだろう。塩も貴重な時代だったのだな。

 仲良しのおばちゃんの家に孫が遊びに来た時、『しもつかれ』を食べさせてみたそうだ。その赤ちゃん、どんな物でも平気で食べてしまう特技があった。だが、『しもつかれ』を口に入れた瞬間、ものすごく難しい顔になりべーと出してしまったそうだ。幼い舌には味が微妙すぎたのかもしれない。現代人は作られた味に慣れてしまって、舌が複雑な味覚を理解できなくなっているとか。その意味では私も赤ちゃん同然か。『しもつかれ』も食べる人が食べれば、実は美味(おい)しいのかもしれない。

(タレント・エッセイスト)

(2003年2月26日朝日新聞東京本社夕刊のマリオン紙面から)

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