ゆであがった大豆のいいにおいが、風に乗ってビニールハウスの中まで流れてくる。巨大なミンチマシーンが、自称力自慢の“おじ様軍団”によって、これまた巨大なたらいの横に運ばれた。巨大なずん胴鍋から、巨大な柄杓(ひしゃく)ですくった豆がその中に移され、みるみる練り状になっていく。巨大づくしで今年も味噌(みそ)作りが始まったのだ。
鍋からあがる湯気も大量だ。今日使われる豆の量110キロ。塩60キロ。糀(こうじ)……なんだかもうわからん。数に弱い私は「いっぱい」と言うしかない。参加する“美味(おい)しいもの好き”の人たちもいっぱい。
一度自分の手で作ってみて美味しいと病み付きになってしまう。味噌や蕎麦(そば)、野菜などはその良い例らしい。この味噌作りの会でも、毎年毎年みんなのうれしい度合いが高まっていくのがよくわかる。「まろやかでコクがあるのよねえ」とは、割烹着(かっぽうぎ)の奥様。「自家製味噌に変えたら血圧が下がってびっくり」など感想もさまざまだ。
私は、青空の下で体を使った物作りが気持ち良くてしょうがない。自分で作った味噌が美味しい味噌汁になったときは、誇らしくもなる。お金で買っていたものが、今は自分で作れるのだ。それは買った物よりずっと美味しくて自然。こんなことができちゃう私ってすごいと素直に思える。これがスローライフの“ミソ”なのだ。
3年目の今年、我が家の初代味噌はついに“3年もの”となった。味噌屋さんの話によると、血液サラサラ効果はこの3年ものが一番とか。国産大豆にミネラルたっぷりの天然塩を使った手作り味噌なら、効果はきっと絶大なはずである。「誰かにあげるときは3年ものというところを強調するんだぞ」とアドバイスを頂いた。恩着せがましく言えば良いのだな。それなら得意だ。
その3年ものを、倉庫に見に行った。なぜか忍び足になってしまうのがおかしい。味噌に耳は無いのに。おどかさないようそっとふたを開けると、中には琥珀(こはく)色のもろみがあふれていて、なめると極めて美味。さっそくキュウリを漬けて食べたいと思った。そしてその下には、いい色になった味噌がいた。
なあ君、よく成長したなあ。
(タレント・エッセイスト)