畑に蒔(ま)いた大根が、放射状に20センチほどの葉を伸ばしている。今日はその間引きの日。久しぶりに両親と一緒の農作業だ。
畑は主に父の責任、田んぼは私という具合に分担を決めている。始めは共同作業だったのだが、少し野菜の作り方がわかってきたら、互いにこだわり屋の性格がもろに出た。種の蒔き方が多いの少ないの、水のやり方が雑だのなんだのと細かいところで意見がくい違い始め、畝を挟んで口げんかとなった。父は昔、声楽を学んだ人。私は演劇学校で発声をやっていたから声のデカさでは譲らない。青空の下、軽トラの運転手も振り返る派手な口論が展開した。
もともとけんか友達みたいな父娘である。長年付き合ってきた母は慣れたもので、それなら別々にしなさいよ、と言い事はあっさり解決。今は大変な作業の時、手伝い合うようにしている。その方が互いの満足感を損なわなくていいのだ。
それにしても大根の種は、1カ所に4粒も5粒もでは蒔き過ぎだ。ギザギザした葉っぱが絡んで引き抜きづらいこと。父のあきれるくらい用心深い性格がここにもよく現れている。発芽しないものもあるから、と多めに蒔くのが彼のやり方なのだ。私は1粒か2粒蒔いて、あとは出ないものはしょうがないと運を天に任せるタイプ。あとあと畝に空きができても気にならない。
そのくせ、間引きとなると父は妙に潔い。パッと根元を見て一番丈夫そうなのを1本だけ選び、他はさっさと抜いてしまう。私はまだ小さい大根を抜くのが哀れで、同じ位に育ったものが幾つもある時には、自分たちでジャンケンして決めてもらいたいと思ってしまう。だが一番すごいのは母で、父より素早く次から次と間引いていく。ちゃんと選んでいるのか、単に勢いでやっているのかちょっと疑わしいくらいだ。抜いたものはみんなまとめて家に持って帰り、みそ汁やいため物、酢漬けなどにして結局は食べてしまうから、あまり気にしていないのかもしれない。
この母の大雑把さと父の細かさを足して2で割ったら私ができたわけだ。う〜ん、遺伝子って不思議。きっと見る人が見れば、畑を作っている人間の性格とか間柄までわかって面白いのだろうな。
(タレント・エッセイスト)