朝日マリオンのロゴ


● ● ● 高木美保の ● ● ●

うふふナチュラルライフ

■トップページ
■うふふナチュラルライフ目次へ

「森のエビフライ」見つけクンクン     

     愛犬ポッキー 初めての冬を歩く

イラスト
イラスト・さかいひろこ

 あいかわらず小雪が舞う中、今日も愛犬ポッキーちゃんのお散歩に出た私と母である。玄関を背に北に向かう。しばらく歩くと雑木林の切れ目から、遠くそびえる山が見えてくる。晴れの日なら、日差しを受けて気持ち良いほどくっきりとした姿だが、冬の間、ほとんどの日は頂に灰色の雲がおおいかぶさり、どんよりとしている。母はこの景色を目にするたびに「お山は吹雪だわ」と言って寒そうに肩をすくめる。寂しい景色だからあまり見たくないそうだ。実は私も寒々とした山を見るのは好きではない。でも、それが冬の山というものなのだからガマンしている。このガマンはもう2カ月続いている。まだ3カ月も残っている。

 綱を握った手が引っぱられて、近頃ではのんびり景色を観賞している暇がないのが幸いだ。犬を連れて歩いていると、特にうちのポッキーちゃんみたいにすぐ転ぶ犬だと、山よりも地面の方を見て歩くばっかりになるので、今日は山を見なかった、なんて日も多いのだった。

 シャリシャリと、雪がシャーベットのような音をたてている。松林のところにくると、常緑の葉に日がさえぎられ、いつまでも雪がとけないでいた。シャーベットの下はアイスバーンだ。すべって転んで手首を骨折する人が毎年いるので、ぬき足さし足で歩く。骨折と言えばポッキーちゃんの得意技。犬という生き物は雪を見ると異常に興奮するようで、跳びはねては着地に失敗しズデッと転ぶ。また骨折したら名前をポキポッキーちゃんに変えちゃうからね、と言っても興奮は収まらないのだった。

 その彼女が、珍しく松林の下で立ち止まることがある。そんな時は地面に鼻をくっつけて、何やら熱心ににおいをかいでいる。小さなエビフライが道に落ちているのだった。もちろん本物ではない。リスが松ぼっくりを食べた後に残った芯がちょうどエビフライのような形になるので、森のエビフライ、と呼ばれているのだった。優れた臭覚を持つ犬には、リスのにおいがかぎとれるのだろうか? 生まれて初めての冬を歩くポッキーちゃん。いつかあの愛らしい姿を見せてやりたい。

(タレント・エッセイスト)

(2004年2月4日朝日新聞東京本社夕刊のマリオン紙面から)

asahi-mullion.comのトップページへ
asahi-mullion.comのトップページへ

このホームページ(asahi-mullion.com)についてのご意見や情報提供は
mullion-hp@asahi.com

朝日新聞のマリオン紙面への掲載や問い合わせなどは
〒104-8011 朝日マリオン21・マリオン編集部
(TEL03-5540-7411 FAX03-3545-0525)
Eメールはmullion-ppr@asahi.com

asahi-mullion.comに掲載の記事や情報、写真の無断転載を禁じます。
すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
Copyright 2004 Asahi Mullion 21. All rights reserved.
No reproduction or republication without written permission.