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2005.4.28(木)更新
三池崇史のシネコラマ

 第4回  「真剣勝負のかおり」
 「でさ。どんなものなのって思ってさぁ。かおりも行ってきたわけさ」
 日本人の進出が続くハリウッドから、幕末の芸者世界を「シカゴ」の監督が描く「SAYURI」の撮影を終え、帰国したばかりの深夜。クラブでシャンパンを飲みながら、桃井かおりが笑ってる。三百六十五日、「かおりはかおりなわけ」なとても素敵(すてき)な人だ。
 「で、どんな感じだった?」
 「ちょろいわけ。楽勝って感じ。監督もさっさと行ってちゃちゃっとやっつけちゃってよ。一緒に遊ぼ」
 この人は何事にも真剣で戦いを挑む。人生を本気で、全力で楽しんでいる人だ。

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 十六、七年前。私が助監督だった頃、仕事をしたことがある。その頃業界では、桃井かおりは生意気で扱いにくい女優と恐れられていた。噂(うわさ)が噂を呼び、「灰皿投げの名手」や「ビール瓶投げの酔っ払い女」と評判だった。で、実際はどうだったかというと……。噂は本当だった。といっても、灰皿やビール瓶を投げまくってるわけではない。本人に確認したところ、「ちょっとだけ投げたことがある」って程度だ。

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 ではなぜ、あれほどまでにスタッフに恐れられていたのか。その答えは簡単に見つかった。誰よりも真剣に映画に向き合ってるだけなのだ。女ひとり、媚(こ)びることなく潔く生きていた。半端なヤツは邪魔なんだ。それだけなのだ。だから、媚びてなれ合い、調和をもって楽に生きていた映画人に恐れられていたわけだ。痛快だ。うらやましい。真剣による勝負であれば、負けるわけにはいかない。それは、死を意味するのだから勝たねばならない。
 あの時、桃井かおりに出会っていなければ、私はあまり使い物にならない助監督のままだったかも知れない。感謝。さて、一緒にハリウッドにでも行って灰皿投げようか。

(2005/4/28)

みいけ・たかし

 60年生まれ、大阪府出身。今村昌平、恩地日出夫監督らに師事。95年「新宿黒社会」で劇場映画監督デビュー。「岸和田少年愚連隊 血煙り純情篇」(97年)、「ゼブラーマン」(04年)など、ジャンルを超えた話題作を世に送り出す。現在、05年夏公開予定の「妖怪大戦争」を製作中。

 

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