マリオン・コムロゴ
2005.9.8(木)更新
三池崇史のシネコラマ

 第21回 「現場揺さぶる女優魂」
 女優という生き物にはいつも翻弄(ほんろう)される。女王様のようにわがままだったり、めちゃくちゃ気さくで優しかったり、やたら酒が強かったり男にだらしなかったり。様々な唖然呆然(あぜんぼうぜん)をスタッフに提供してくれる。そんな中でも特別なキャラの持ち主、「松坂慶子の真実」を暴露しようと思う。

   ■     ■   

 現在、某公共放送で放送中の大きな河の物語「義経」で平清盛の妻を凜(りん)と演じている松坂慶子はかなり凄(すご)い女なのです。まず、凄く美しい。しかしその美しさは容姿だけでなく、心は凄く純粋で魂はつるんとした少女の顔をしている。
 こんなことがあった。私が初めて松坂慶子を体験した映画「カタクリ家の幸福」の現場での出来事だ。この映画は庶民派ミュージカルなもんですから、当然歌って踊るシーンがあるわけです。で、この大女優は振り付けを自分が納得できるまで凄い集中力で稽古(けいこ)するわけですよ。共演の沢田研二、武田真治、大御所・丹波哲郎と共に真剣勝負のリハーサルを重ねるわけだ。で、監督の私として「よし、本番行ってみよう」ってレベルに達した時、松坂慶子が食い下がる。
 「すいません、皆さん。もう一度、もう一回だけ練習させて下さい。そしたらもっとうまく出来ると思うんです。お願いします!」
 ワンカットたりとも妥協を許さぬ女優魂が撮影現場を揺さぶる。
 「よし。もう一回!」
 火のような最後の稽古に映画の神が舞い降りる。震える声で私は叫んだ。
 「素晴らしい。本番だ!」

   ■     ■   

 と、その瞬間、松坂慶子が崩れ落ちた。
 「……ごめんなさい。私、もう体力の限界です。両方のふくらはぎがつっちゃいました。だからもう立てないと思います」
 凄い、凄いぞ松坂慶子!
 今日は撮影中止だ。な〜に、明日は明日の風が吹くさ。

(2005/9/8)

みいけ・たかし

 60年生まれ、大阪府出身。今村昌平、恩地日出夫監督らに師事。95年「新宿黒社会」で劇場映画監督デビュー。「岸和田少年愚連隊 血煙り純情篇」(97年)、「ゼブラーマン」(04年)など、ジャンルを超えた話題作を世に送り出す。

 
 バックナンバー 

第20回 「土曜の朝の過ごし方」 (2005/9/1)
第19回 「中身で勝利だ!」 (2005/8/25)
第18回 「職人たちの独壇場で」 (2005/8/11)
第17回 「たばこ」 (2005/8/4)
第16回 「忙し過ぎの怠け者」 (2005/7/28)
第15回 「KINGからDOG?」 (2005/7/21)
第14回 「私のムーミン谷」 (2005/7/14)
第13回 「心の中の正直な思い」 (2005/7/7)
第12回 「クランクインの前」 (2005/6/30)
第11回 「万博でポップ・トーク」 (2005/6/23)
第10回 「ウルトラマン」 (2005/6/16)
第9回 「かっこよすぎる吉川晃司」 (2005/6/9)
第8回 「清志郎とコラボレート」 (2005/6/2)
第7回 「韓流ブームとホラー」 (2005/5/26)
第6回 「たかが妖怪 されど妖怪」 (2005/5/19)
第5回 「秘め事」 (2004/5/12)
第4回 「真剣勝負のかおり」 (2005/4/28)
第3回 「目玉のオヤジ」 (2005/4/21)
第2回 「妖怪大戦争」 (2005/4/14)
第1回 「寿司と美少女」 (2005/4/7)


サイトマップ | 会社案内 | 広告募集 | 問い合わせ | 個人情報 | 著作権 | リンク
asahi-mullion.comに掲載の記事や情報、写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
Copyright 2005 Asahi Mullion 21. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.