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2005.11.24(木)更新
三池崇史のシネコラマ

 第31回 「『秘密の穴』を抜けて」
 映画の撮影所には、完成した作品の仕上がりを確認するための試写室がある。バターをたっぷり垂らしたポップコーンとビールが売ってない以外は、そんじょそこらのシネコンに負けない映写機と音響設備を備えた立派な劇場が撮影所の中にあるのです。そこでは、撮影に参加したスタッフが自分の仕事をチェックするため、完成したばかりの映画がどこよりも早く上映されます。それ故に、「関係者以外立ち入り禁止」が前提のプレミア物の上映が行われるわけでございます。

   ■     ■   

 「今日の午後1時。『男たちの大和』の試写があるらしいぜ」
 私の作品のすべてを編集しているスーパー・エディターの島村泰司が観(み)たそ〜な声で私の耳元で囁(ささや)く。
 「いや。今、我々はそれどころじゃないでしょう。明日のオールラッシュに向けて編集を完璧(かんぺき)なものにしなければ……」
 オールラッシュっていうのは、その作品の映像を切ったり張ったりする最後の作業の発表会のようなもので、出資者やプロデューサーが次の段階、すなわち音楽や音響効果を加える作業に進んでもよろしいという判断を下す大事な催し物なのでございます。
 「でもさぁ、すごくいいって噂だぜ」
 「……そうなの」
 「そうさ」
 「じゃ、サボって観ちゃおかなぁ……。でもさぁ、俺(おれ)たち関係者じゃないし、どうやって中に?」
 スーパー・エディター島村の目がキラリと光った。
 「任せときな。試写室への秘密の穴があるのさ」

   ■     ■   

 東映撮影所の名誉のためにその「秘密の穴」については詳しく語るのは控えさせていただくが……、その穴は確かに存在した。そして、俺たちは観た。そして泣いた。噂以上の名作だった。ぜひ、観るべし。そして、語り合おうじゃありませんか。

(2005/11/24)

みいけ・たかし

 60年生まれ、大阪府出身。今村昌平、恩地日出夫監督らに師事。95年「新宿黒社会」で劇場映画監督デビュー。「岸和田少年愚連隊 血煙り純情篇」(97年)、「ゼブラーマン」(04年)など、ジャンルを超えた話題作を世に送り出す。

 
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