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2005.12.7(水)更新  日本音紀行 もうひとつの風景

 
琴引浜 (京都府)

海が造った足下の楽器
音を確かめた足跡が点々と残る。砂浜の一角にある露天風呂に向かう人の足もとも「キュン、キュン」と鳴いていた
=京都府京丹後市で(撮影・渡辺瑞男)

【交通】京都駅から、JR山陰線福知山駅経由、北近畿タンゴ鉄道・網野駅まで約2時間20分。同駅から車約10分。車は、京都縦貫道・宮津天橋立インターから約50分。
 晴れた日に砂浜を歩く。靴底が、ぶるっと震えるような愛嬌(あいきょう)たっぷりの音をたてた。新雪を踏むときにも似ているが、砂のざらりと乾いた感触が加わり、足の踏み方や滑らせ方の違いで、音も微妙に変わる。

 「琴引浜」――。ここでは、打ち寄せる日本海の荒波が絶えず砂を運び去る。沖合の海底に硬い岩盤があり、洗浄皿の役目を果たし、砂を洗う。そして再び浜に打ち返す。財団法人日本ナショナルトラストによると、こうした自然の巧みなシステムに加え、よその浜に比べ石英の含有量が多いことから、砂粒がきしみやすく、鳴き砂が起こるという。

 「だから、たばこの灰やゴミが砂にちょっとでも混ざったりすると、もう鳴りませんわ」

 そう語るのは浜で民宿を経営する松尾庸介さん。近年、観光開発や海水汚染のため全国の鳴き砂が消えていくなか、「琴引浜の鳴り砂を守る会」会長として、地元の人々や海水浴客に呼びかけ、人工物を一切浜から取り除くよう尽力してきた。

 訪ねると、すぐに浜に案内された。砂のよく鳴く場所とうまく鳴かせるコツを教えてくれるという。

 人の踏み入れていない砂地を探す。両手で砂をかき集めるように繰り返し手のひらのふちで鋭くこすり上げる。楽器でも演奏しているような松尾さんの手さばきを見よう見まねでやってみる。摩擦が起きる瞬間、砂の振動が手にぐぐっと伝わる。はたと気づく。確かにそれは楽器が音を出すしくみと同じなのだ。昔の人が琴にたとえた理由がわかったような気がした。

(中村正人)


 ◆琴引浜鳴き砂文化館
 日本ナショナルトラストなどが設立し、京丹後市が運営。水中の鳴き砂の様子を再現する装置「カエルのゆりかご」や、砂を鳴らす体験コーナーなど。午前9時〜午後5時。(火)((祝)(休)の場合は翌日)と年末年始休館。300円、小・中学生100円。問い合わせは同館(0772・72・5511)。
 ◆鳴き砂セット
 琴引浜の砂は京丹後市の天然記念物で、持ち帰り禁止。代わりに周辺の砂丘でとれた同成分の砂と、特製グラス、ガラス棒の「鳴き砂セット」(1200円)がある。琴引浜鳴き砂文化館や付近の民宿などで購入できる。
 ◆静神社
 琴引浜から車で西へ約10分、源義経に愛された静御前ゆかりの神社。義経の手紙や遺品は1782(天明2)年の大火で神社と共に焼失し、今は元の場所から200メートルほどの高台に、静御前木像とともにまつられている。11月、能舞台風の展望台や丸太を使った遊歩道などを整備した「静の杜(もり)」が完成した。問い合わせは京丹後市観光振興課(0772・69・0450)。
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