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2006.2.15(水)更新  日本音紀行 もうひとつの風景

からむし織 (福島県昭和村)

早春の音をつなぐ織姫
斎藤環さんはもの作りにあこがれ織姫になって2年目。5メートルの洋服用生地を織っているが、いずれは地機織りも手がけたいという=村克雪センターで、上田頴人撮影。

【交通】昭和村へは、JR会津若松駅から只見線で会津川口駅下車、バスで約35分。車は、磐越自動車道・会津坂下インターから約40分。
 奥会津で、「織姫」に会った。

 白木を組んだ機(はた)の前に座り、一心に手を動かす若い女性。規則正しいリズムは機を揺らして床に響き、くぐもった音となって雪に埋もれた戸外にも流れ出す。

 昭和村は「からむし」という植物の産地で、繊維からとれる糸で布を織り、特産としてきた。そんな土地柄、村には常時数人の「織姫」がいる。十余年前から村が全国公募している、住み込みの研修生のことだ。

 小さい頃から伝統工芸に興味があったという松本綾さん(21)は、宮城県の短大を卒業してすぐに応募した。「平らな気持ちじゃないと、平らかな糸はできない。根気のいる作業です」。慌てず騒がず、自然に逆らわない。雪国の暮らしそのもののようだと、彼女たちは話す。

 織姫が使う機に比べ、昔ながらの「地機(じばた)」は扱いがずっと難しい。糸を腰に固定して、全身を機の一部のように動かす。

 60年紡ぎ続けてきたという五十嵐貞代さん(75)。「私ら娘時代は、表を人が通る時は糸が空(から)っぺでも音良く織るもんだって、よく騒がれたもんだけどもね」。機音が良いのは上手な証拠、それが嫁入りの条件とされたんだ−−。はにかみながら織ってみせる貞代さんの地機の音は、鼓のように張りがあって軽やかで、トントンカラリとよどみない。

 地機を操れる熟練者は、今や村に10人もいなくなってしまった。でも毎春、伝統の技に触れた織姫が巣立ち、その何人かは村に根を張る。

 機織り作業の最盛期は3月。機音が響くと春は近い。

 (兼古勝史)


 ◆からむし織

 イラクサ科の多年草・カラムシ。昭和村は、600年以上前から栽培してきたとされる、国内に残る数少ない産地。古来、同村のカラムシは、高級織物「越後上布」「小千谷縮」の原材料。当時からの伝統を受け継いだ、カラムシの栽培と繊維を取り出す技術は、国選定保存技術に認定されている。
 
 ◆織姫交流館

 同村「からむし織の里」内にあり、民芸品や特産品の展示販売コーナー、糸作りや機織りの体験コーナーがある施設。コースター作り(約15分、1050円)、花瓶敷き作り(約30分、3150円)コースなど。機織りの実演も。午前9時半〜正午、午後1時〜4時。泊まりがけでじっくり学べる糸作り体験コースも(要予約)。問い合わせは0241・58・1655。
 ◆「織姫」事業

 からむし織の担い手を育成する村主催の事業。毎年5月〜翌3月まで約11カ月間にわたって共同生活をしながら、「克雪管理センター」を拠点に、畑でのカラムシ作りから織までの一連の技術を学ぶ。18歳以上対象。07年度生の募集は検討中。問い合わせは村総務課企画係(0241・57・2116)。
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