マリオン・コムロゴ
2006.3.8(木)更新  日本音紀行 もうひとつの風景

 
小鹿田焼の唐臼(大分県日田市)

職人の心 のどかに伴奏
山あいの集落を流れる谷川の水を利用して、唐臼は休みなく陶土をつき続ける。左上に登り窯の煙突が見える
=日田市源栄町皿山で(撮影・上田頴人)

【交通】小鹿田の里へは、JR博多駅から久留米駅経由で久大線・日田駅へ。駅からバスで約40分、タクシーで約30分。
 渓流の水が、「フネ」と呼ばれる水受けにいっぱいになると、重みで竿(さお)が「ギィーッ」ととぼけたうなり声を上げ、ゆっくり振り上げられる。その瞬間、水は一気に川にこぼれ、反動で餅つきのように杵(きね)が赤い陶土をつく。高く乾いた響きに少し遅れて、竿を固定した留め具が思い出したようにガタゴト揺れる。

 水流を利用して竹筒を鳴らす「鹿威(ししおど)し」と同じ原理で、焼き物の原料の陶石を砕く唐臼。のどかな音が、どこを歩いていても耳に届く。かつては全国各地で使われていた唐臼が、次々と姿を消してしまった今なお、山あいの集落「小鹿田(おんた)の里」では、一年中陶土をつき続けている。

 75年前、無名の職人による民衆工芸の美を発掘する「民芸運動」の指導者、柳宗悦(やなぎむねよし)がこの地を訪ねた。「音の間はいたく長い」「だがこの緩やかな音があってこの窯がある」と、昔ながらの技法と手仕事のペースを守り続ける小鹿田焼の魅力を、著書で賞美している。

 その「音の間」も季節や天候によってずいぶん変わる。「雨が降ると水量が多くなるから、テンポが少し速くなる。秋口がいちばん遅くて1時間に数回打つかどうか。でも、急いでたくさんつくることはない。唐臼がつく分でちょうどいい」。代々この地で窯元を営む柳瀬朝夫さん(63)が教えてくれた。

 民宿で向かいの唐臼を一晩中耳にしながら眠りに就いた翌朝、裏山の採土場に上った。見下ろすと、あちらからひとつ、こちらからひとつと唐臼の音がのんびりと、いつまでも集落を包んでいた。

(中村正人)


 ◆リーチをも魅了した民芸陶器

 300年近くの伝統を持つ小鹿田焼は、国指定重要無形文化財。飛びかんな、はけ目、くし目などの技法と素朴で温かみのある質感が特徴で、日用雑器を生産してきた。英国の著名な陶芸家バーナード・リーチも2度にわたって訪れた。「小鹿田焼陶芸館」(TEL日田観光協会、0973・22・2036)では江戸時代から現代までの作を展示。リーチの大皿も必見。午前9時〜午後5時。
 ◆小鹿田の里で「唐臼祭」

 「唐臼」は中国・朝鮮から伝来したとの説があり、小鹿田では43基が現役で動く。その名を冠した祭り。5月3日(水・祝)〜5日(金・祝)、午前9時〜午後5時。蹴(け)ってまわす蹴ろくろの無料体験。唐臼の写真コンテストも(応募要項は当日配布)。問い合わせは小鹿田焼同業組合(0973・29・2440)。

 ◆窯巡りの後は、酒の杜(もり)へ

 澄んだ空気と清らかな水が、いい酒を生む。近隣の2カ所で工程の見学と試飲も。「いいちこ日田蒸留所」(TEL0973・25・5600)。午前10時〜午後4時。(祝)除く(火)休み。
 ▼「サッポロビール新九州工場」(TEL0973・25・1100)。午前10時〜午後4時((土)(日)は9時から)。要予約

→日本音紀行 もうひとつの風景 バックナンバーへ

asahi-mullion.comトップページへ
サイトマップ | 会社案内 | 広告募集 | 問い合わせ | 個人情報 | 著作権 | リンク
asahi-mullion.comに掲載の記事や情報、写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
Copyright 2006 Asahi Mullion 21. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.