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2006.4.12(水)更新  日本音紀行 もうひとつの風景

井波の木彫り (富山県南砺市)

木との会話 町に満ちて
200種ものノミを使い分け、リズミカルに槌を打ち分けて生まれる彫刻。槌音にひかれ当地を訪ねる人も多い。=南砺市井波の井波木彫工芸館で、垣内博撮影。

【交通】井波地区へは、JR高岡駅からバスで約1時間。車は、北陸道砺波インターから約10分。
 石畳の通りに、ノミをたたく乾いた音が流れる。道の左右の工房から漏れてくる、リズミカルな連打。耳を澄ますと、たたき方は微妙に違い、工房ごとにリズムがあるかのように聞こえてくる。

 砺波平野の南端にある井波の里は、伝統的な彫刻の町だ。古くは寺社の装飾や神仏像、近年は住宅の欄間(らんま)などの工芸品から現代彫刻まで、木彫り作品を世に送り出してきた。

 工房の一軒を訪ねた。木戸の音とクスノキの香り。畳の上で、年配の親方が制作途中の欄間を前に腰を据え、ノミをたたく。後ろで若い弟子たちが、仕上げの作業をしている。

 工程には、全体の輪郭を彫り出す「粗彫り」と、精密に彫り込む「小彫り」、表面を削って仕上げる「仕上げ彫り」などがある。最も大きな音がする「粗彫り」は、熟達を要する親方の仕事だ。

 「彫刻っちゅうのはマイナスの仕事。削り取るほど、骸骨(がいこつ)みたいに品がなくなる。若いうちは探りながら彫るのが音にも出る」。この道38年の彫刻師・前川正治さん(59)が言う。「彫り出す形が頭の中に入っとる人は迷いがないから、一発で決める。カーンと大きな音がしますよ」

 厚みを均等に残すのが難しい、と職人たちは言う。木が薄くなると、彫り込む音が微妙に軽くなる。「これが聞いて分かるようになれば一人前。音が分かる職人でないと」。別の親方が、こんな言い方で道の奥深さを語っていた。

 耳も研ぎ澄まして彫る。通りに満ちる槌(つち)音は、職人と木が交わす会話の音でもある。 (兼古勝史)


 ◆彫刻文化が息づく門前町

 井波の町の中心部に建つ瑞泉寺。「井波彫刻」は江戸時代、焼失した寺の再建のため、京都から彫刻師を招き、その技法を地元の宮大工らが学んだことに始まる。門前から続く石畳の八日町通りには、工房が軒を連ねる。世帯主の干支(えと)の表札や軒看板のほか、電話ボックスなど随所に彫刻が施され、風情が漂う。
 ◆木彫りを体験しよう

  「いなみ木彫りの里 創遊館」の「くりえーと工房」では、井波彫刻師の指導のもと、木彫りの体験ができる。20分から1日までの6コースがあり、ブローチ、皿、表札とレベルも様々。興味に応じて好きなコースが選べる。材料費込みで600円から。南砺市北川。午前9時〜午後5時。第2・4(水)休み。要予約。問い合わせは0763・82・5757。
 ◆4年に一度の野外彫刻イベント

 国内外の作家を招き、2週間にわたって公開制作を行う「いなみ国際木彫刻キャンプ」。1991年から4年ごとに開催され、前回03年には海外14カ国から参加した。民族の伝統・文化を象徴する作品がテーマ。クスノキを材料にノミやチェーンソーなどで作り上げていく様子を、間近に見ることができる。これまでの作品はパブリックアートとして、会場となった公園や公共施設などに展示されている。次回は来年8月の予定。問い合わせは実行委(0763・82・5885)。
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