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2006.5.10(水)更新  日本音紀行 もうひとつの風景

製材水車 (岡山県美作市)

「老兵」のリズム 郷愁刻む
工場の外壁で水しぶきをあげて回る製材用水車。5月に入ってもまだサクラが咲いていた=岡山県美作市右手で(撮影・渡辺瑞男)

【交通】製材水車へは、JR岡山駅から津山線で津山駅下車、さらに車で約1時間。中国道美作インターからは約30分。
 山の清流が樋(とい)を伝って一気に流れ込み、鉄製の心棒がグリグリと音を立てる。直径5メートル近い巨大な輪が、せき立てられるような激しさで回り、4秒ほどで1回転する。ほとばしる水は、蒸気機関車のようなアップテンポのリズムを刻んで水受けを打ち、勢いよく飛び散っていく。

 中国山地の奥深い渓流沿いに、まもなく「70歳」になる今も現役の、製材水車がある。ノコギリを毎分800回転させる力は、電気モーターに引けを取らない。厚さ1・5メートルの木材も切断できる。

 「現役の製材水車は、ほかには静岡県に一つあるだけです」。岡山理科大学で物理学を研究する若村国夫さん(60)は、長らく全国の水車の実態を調べてきた。30年ほど前の調査で、現役の水車が一番多かったのは岡山県だった。「急流の川が多く、動力を得やすかったからでしょう」。美作をはじめとする県北地方には、最盛期の明治中ごろ、紙漉(す)きや米つき用の水車が800台以上あった。昭和30年代まで、谷あいごとに十や二十は見受けられたという。

 今では、現役で仕事をしている水車は県内にもわずかしか残っていない。動いているのはほとんどが、観光や町おこしの目的で再現されたものだ。本来の水車は、年配の人の記憶の中で原風景として生きるだけ。そうなりつつある。

 この製材水車も、今では月に数回しか出番がなくなった。作業が終わると水がせき止められ、動きが止まる。先ほどまで目に見えていた自然の力が、静かな水しぶきと渓流の音に姿を変えた。

(中村正人)


 ◆水車が育んだ和紙の里

 岡山県北部は和紙の原料、ミツマタの産地。紙幣の原料として財務省印刷局に納入する「局納ミツマタ」としても名高い。山で栽培され、春には淡く黄色い花をつける。その木皮をたたいてほぐし、繊維を取り出す動力として紙漉き水車が重宝された。現在もわずかだが稼働し、県の郷土伝統的工芸指定の「横野和紙」や、「高尾和紙」など、良質な和紙を作り続けている。
 ◆気軽に和紙づくり

 ▼能登香の里小房 製材水車から南に約9キロ、池を囲むようにコテージ、ログハウスなどが並ぶ宿泊施設。囲炉裏のある農家を改装した交流館や、かやぶき屋根の炭焼き小屋などが併設され、のどかな農村風景が広がる。紙すき工房で、地元の卒業証書にも使われている和紙の紙すき体験が可能。小紙525円から。要予約。美作市小房。午前9時〜午後5時。問い合わせは0868・76・0855。
 ▼夢すき公園 県北西部の新見市にあり、製粉水車を再現した最大直径13.6メートルの三連水車「親子孫水車」が目印。園内の「紙の館」で、奈良平安期より地元に伝わる奥備中神代(こうじろ)和紙の紙すき体験ができる。はがき250円、うちわ550円から。午前9時〜午後5時(紙すきは4時半まで)。問い合わせは0867・92・6473。
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