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2006.5.24(水)更新  日本音紀行 もうひとつの風景

お遍路(香川県さぬき市)

巡礼の旅に 寄り添う鈴
大窪寺本堂は参拝のお遍路さんでにぎわう。杖置き場は、行をともにした杖に鈴が光る=香川県さぬき市で(撮影・塚原紘)

【交通】大窪寺へは、JR志度駅からバスで約1時間。車は高松道・志度インターから約30分。
 朝もやがかかる森に、差し込む光のように無数の鈴の音が響き渡る。杖(つえ)に結んだ魔よけ・獣よけの鈴だ。上り坂ではカリン、カリンと力強く、下り坂ではシャンシャンと涼やかに、道中の気持ちを引き立てる。

 弘法大師に縁の深い四国八十八のお寺を巡る「お遍路」。大師が歩いたとされる千数百キロの道のりを、大師と共にと念じながらたどる巡礼は、今なお多くの人を引きつける。

 終点の讃岐路・大窪寺の前に、小さな民宿がある。おかみの安部キミエさん(75)は、戦後間もない頃、八十八カ所を全部歩いた。病弱な体が丈夫になるようにと母親が願掛けをし、全行程の遍路を命じたのだ。

 「十里十カ所といって、一番から十番まで娘5、6人で遍路するのが嫁入り道具みたいなもんだったんだわ」。でも、若い娘が独りで歩き通すのは異例のことだった。「食べモンに困らんようにと着物のいたるところにお金を縫いこんで、宿に納める米三升、持たせてくれた。でも、すぐに尽きてしもてな。後は托鉢(たくはつ)。もう心細うて」

 食糧難の時代、行く先々の子供たちから棒でたたかれ追い払われた。飢えにおびえる毎日を、母との約束だけが支えた。2カ月半後。家に帰りついた娘を、母親は泣きじゃくりながら出迎え、抱きしめた。

 「大窪寺に杖と笠と鈴を納めてな。もう鈴の音は聞こえんでしょ、今度は逆に心細うて。あくる日、大窪寺に鈴だけ取りに戻ったさ」

 今も大事にとってある、棺桶(かんおけ)に必ず入れてって遺言しとるの。そう、ころころと笑った。

(横内陽子)


 ◆遍路みちを巡る

 弘法大師がたどった通り、徳島にある1番霊山寺から四国を時計回りに巡るのを「順打ち」、88番大窪寺から逆に巡るのを「逆打ち」という。順打ちが基本とされているが、逆打ちの方が「弘法大師に出会いやすい」として功徳が大きいとされる。通しで巡ると歩いて約50日かかるという遍路だが、何度かに分けていく「区切り打ち」も仕事を持つ人たちに人気だ。三日間連続参加で各県ごとの「一国参り」ができる日帰りバスツアーも(1日6800円から、問い合わせはJR四国販売センター087・825・1662)。

 ◆お遍路の基本アイテム

 法衣を簡略化した首から掛ける輪袈裟(わげさ)と、弘法大師の分身とされる金剛杖(こんごうづえ)は遍路に欠かせない。普段着でもよいが、寺(札所)に納める納札は沿道の人から接待を受けた際に名刺代わりに差し出すことになっていて、エチケットとしてそろえたい。

 ◆前山おへんろ交流サロン

 大窪寺までの遍路道にある、結願を前にしたお遍路さん同士の情報交換や休憩用のスペース。納札や巡礼の装束などを展示する「へんろ資料展示室」も。さぬき市前山。午前9時〜午後4時(入館は3時半まで)。年末年始休み。TEL0879・52・0208。

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