マリオン・コムロゴ
2006.6.7(水)更新  日本音紀行 もうひとつの風景

五和のイルカ(熊本県天草市)

波間に聞こえる息遣い
好奇心が強いのか、遊んでいるのか、船の周りに集まってくるイルカの群れ=熊本県天草市の通詞島沖で(撮影・上田頴人)

【交通】通詞島へは、天草空港からバスで約20分。熊本市街地から車で約2時間半。
 港からボートで5分。波間に一群の、黒いとがった背びれが見えた。ざわめく海域に近づくと、一頭のイルカが突然、バネのように体をしならせながら波をけって海上に跳ね上がり、水しぶきが舞った。

 ボートを止める。イルカたちは泳ぎをやめ水中からのんびりと頭を出し、プハッーと息を吹き上げた。数分おきに繰り返される吐息が、ときに水を吸い込み鼻づまりを起こしてピーと甲高く鳴る。同じ哺乳(ほにゅう)動物なんだと改めて気づく。

 天草諸島の北端にある、天草市五和(いつわ)町の通詞島(つうじしま)。この周辺の海に、約200頭のミナミハンドウイルカがすみついている。島から対岸の島原半島まで約4キロ。潮の流れが速いため定置網に適さず、素潜り漁が中心だったことが幸いした。地元の人は「根付き」のイルカと呼ぶ。

 「自分らが生まれる前からイルカはおった」。島で長く漁を営んできた江上豊さん(63)は言う。「ウニを捕ろうと潜っていると、背後に気配を感じて、振り向くとイルカがこっちをじっと見よるとですよ」。魚の群れを音の反射で探すイルカの、独特の鳴き声もよく聞いた。「水の中ではキリキリカリカリ……まるで歯ぎしりのようだ」

 最近、多くの観光客が島に来るのはうれしいが、増え続ける観光船がイルカ本来の暮らしを妨げないか。操船する島の漁師も悩んでいる。

 江上さんはお客によく言う。「あんたが見とるのと同じように、イルカもあんたをよう見とるとよ」。一緒に共生の道を考えよう、そんな呼びかけだ。

(中村正人)


 ◆通詞島

 ウニ漁など漁業が盛んな一周5キロ弱の小さな島。白い風車が目印で、ミネラルを多く含んだ塩がとれることでも知られる。海沿いの丘に建つ交流施設「ユメール」は、風力発電を利用した大浴場があり、仕事を終えた漁師らの憩いの場となっている。レストランなどがある2階からは有明海が見渡せ、イルカの泳ぐ姿も。
 ◆イルカに出会う

 ▼イルカウオッチング 大小の漁船が天草市五和町の二江港などから出船。漁師の案内で通詞島沖を約1時間巡り、潜ったり水面に顔を出したりするイルカの愛らしい姿が見られる。春先から初夏にかけて、生まれてまもない1メートル弱の赤ちゃんイルカの姿も。船の窓口は町内に十数軒あり、おのおの1日4便前後。2500円程度。お問い合わせ先市観光協会五和支部(0969・32・2223)。二江港の近くには、骨格標本や水中写真などを展示するイルカミュージアムも(午前9時〜午後5時、不定休、TEL0120・141132、丸健水産内)。
 ▼天草いるかワールド イルカショーのほか、イルカにポーズを指示するショー体験やイルカとの握手など、身近な触れ合いを楽しめる。入園料800円、小学生500円、3歳以上200円。背びれにつかまり一緒に泳ぐドルフィンスイム体験も(小学生以上6000円〜、要予約)。天草市本渡町。午前9時〜午後5時半。TEL0969・22・2103。
→日本音紀行 もうひとつの風景 バックナンバーへ

asahi-mullion.comトップページへ
サイトマップ | 会社案内 | 広告募集 | 問い合わせ | 個人情報 | 著作権 | リンク
asahi-mullion.comに掲載の記事や情報、写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
Copyright 2006 Asahi Mullion 21. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.