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2006.7.12(水)更新  日本音紀行 もうひとつの風景

伊根浦の舟屋(京都府伊根町)

波の歌声 部屋に満ちて
舟は漁に出るまで舟屋に格納される。さざ波が軽やかに打ち寄せる=京都府伊根町で、撮影・塚原紘

【交通】伊根町へは、JR京都駅から山陰線で福知山駅乗り換え、北近畿タンゴ鉄道・天橋立駅下車。バスで約50分。
 早朝、カモメの声で目が覚めた。海辺の宿の八畳間。波音の聞こえ方が、よそとは違う。建物の壁に直接パタンパタンと打ち寄せる、その音が立ち上ってきて部屋を包み込む。目を閉じると、海の真ん中に浮かぶ舟に乗っているような気分だ。

 丹後半島の東端の伊根浦に、舟屋と呼ばれる独特の造りの家並みがある。1階は湾に面して口を開け、海から舟を引き入れることができるよう、石造りやコンクリート製のスロープになっている。2階には部屋。民宿になっているところもある。

 もともとは漁師の舟置き場で、2階は漁具を置いたり生活の場に使ったりしていた。元漁師の奥野重成さん(71)の舟屋も、今は民宿に改装してあるけれど、遠い昔の新婚時代の思い出が詰まっている。

 「魚が目ぇ覚ます夜明けを待って、1階で漁の準備をしとるんさ。対岸で舟のエンジンがひとふかしでもしてみぃ、こら大変と、わしも競って舟を出したわ」

 舟屋の外壁を波がバタンバタンと強く不規則にたたくときは寝床から出ない。湾の外はもっとしけているからだ−−。そんな風に仕事の話に終始する重成さんの傍ら、妻の明美さん(67)は、漁から帰ってくる舟の音が聞こえると舟屋の入り口で出迎えて、一緒に漁具の手入れをしたもんだ、と応じる。

 2人がかつて暮らした八畳間で、朝の時間を過ごす。夜明けの漁から戻る舟のエンジン音、網をトントンとたたいてゴミを取る音……。今も変わらぬ漁師の生活が、物語のように聞こえてくる。

(横内陽子)


 ◆舟屋

  伊根浦の海沿い約5キロに、230軒ほどの舟屋が建ち並ぶ。東西と北の三方には山、南に開いた湾口には小島が浮かぶ自然条件が、波穏やかな環境を作り、江戸期に集落の原型ができた。もとは、わらぶき平屋であった舟屋も、漁師の生活に合うよう改良され、2階建てに。舟屋を見るには、「伊根湾めぐり遊覧船」。午前9時〜午後4時の毎時30分ごとに運航。中学生以上660円、小学生330円。要予約。問い合わせは丹後海陸交通(0772・32・0009)。
 ▼「視ーカヤック体感事業」 カヤックで湾をめぐり、実際に舟屋に上がる。7月29日(土)、9月23日(土)(祝)、10月22日(日)開催。小学5年生以上対象。5500円(保険料含む)、カヤック持ち込みの場合は3000円。各回先着10人。要予約。問い合わせは伊根町商工会(0772・32・0302)。
 ▼「舟屋の里公園」 湾を一望できる道の駅。問い合わせは町観光協会(0772・32・0277)。
 ◆伝説の残る神社

 北にバス約20〜30分で「浦嶋(うらしま)神社」(問い合わせは0772・33・0721)。各地に残る浦島太郎伝説だが、この神社に伝わるものは日本書紀にも記述があり、最古といわれる。浦嶋明神縁起絵巻や玉手箱を解説付きで観覧できる。2日前までに予約。午前9時〜午後5時。400円、中高生300円。
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