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妻の工夫見て、ひらめく   くらしの良品探訪タイトル
イラスト
【イラストより】ヤシの実の繊維を、二つ折りにした針金(はりがね)で巻き込んでいく。たわしが一個一個、手作りされていく。
第1回
亀の子たわし 亀の子たわし
東京・巣鴨


地図
 JR巣鴨駅を出ると「巣鴨地蔵通り商店街」がある。俗に「おばあちゃんの原宿」と呼ばれる。大勢のお年寄りが訪れ、我が世の春を謳歌(おうか)している。

 数キロ続く通りには、お年寄りに気を使ってくれるちょっとレトロな衣料品や雑貨店、食堂などが軒を連ねている。商店街の中心は、もちろん「とげぬき地蔵」。屋台も出て、毎日が縁日のようだ。

 長い通りを抜けると「庚申(こうしん)塚」。そのまた先が「掘割」で、さらに足を延ばすと板橋に出る。近藤勇の石像がある寿徳寺までのコースが今、ひそかな人気だ。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 その途中の滝野川に、西尾商店の古い洋館社屋がある。ここで、あの超ロングセラーの亀の子束子(たわし)が作られている。たわしは1907(明治40)年、初代西尾正左衛門の発明。商っていた履物の泥を落とす玄関マットに使うシュロのモールを、妻が折り曲げて使っているのを見て、ハタとひざを打った。水に縁があり、形が亀に似ているので「亀の子束子」と名付けた。これが大ヒットした。

 たわしの原料は、ココナツヤシの繊維。その繊維の硬さと強さ、耐水性など、まさにたわしのためにあるような素材だ。諸外国では、船の甲板を磨くのに、ヤシの実を半分に割って使った。油分を含んでいて、ワックス効果もある。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 たわしの作り方は、昔から変わっていない。古い手動式の機械がいまも使われている。ヤシの実の繊維を一定の長さに裁断し、二つ折りにした針金に挟んで巻き込んでいく。標準のたわしで重さが50グラム。女性の手におさまる大きさだ。

 機械に入れる時の材料の厚みや並べ方で形が決まる。針金の巻き方が緩いと繊維が抜け、締めすぎると針金が切れる。いいたわしは繊維が密で針金が見えない。

 「一人前になるのに10年かかります」

 巻き上げた棒たわしを二つ折りに曲げ、真ん中に細縄をかけて結ぶ。ぐっと持ちやすくなる。

 天然繊維のたわしは、洗剤を使わなくても食器の油や焦げをよく落とす。油が染み込んでも、ゆすぐと落ちる。皮膚マッサージをすると血行がよくなる。

 パームのたわしは、ジャガイモやゴボウを洗うと皮がきれいにむける。木製品や鉄器を磨くにもいい。シュロのたわしは、ガラスの食器を洗っても傷がつかない。ホーローやステンレスの鍋にもいい。ボディーケア用のたわしもある。

 たかがたわし。だが、この小さな剛毛の塊に、職人の技と、暮らしを快適にする英知が凝縮している。


地蔵通り商店街
巣鴨地蔵通り商店街
とげぬき地蔵
お参りの人が絶えないとげぬき地蔵

プレゼント
プレゼント 亀の子たわし、サイザル麻のボディーケア用たわし2個、キーホルダーのセットを5人に。
 はがきに郵便番号、住所、氏名、年齢、職業、電話番号、プレゼント希望と記し、郵便番号114・0023東京都北区滝野川6の14の8、亀の子束子西尾商店(TEL03・3916・3231、http://www.kamenoko-tawashi.co.jp)。9月3日消印有効。9月中旬発送。

(2003年8月20日朝日新聞東京本社夕刊のマリオン紙面から)

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