
【イラストより】1000度以上で焼いた炭を引き出し、スバイをかけて一気に冷やす。
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第3回 備長炭
 和歌山県南部町 |
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紀州、熊野は行けども行けども山また山。その深い山に抱かれるように熊野三山や「蟻(あり)の熊野詣」の古道が続いている。
緑に染まるような山を歩いていると、清澄な空気に混じって、鼻腔(びくう)を刺激する、すえたような煙のにおいが流れてくる。炭焼きの窯が近くにあるな、と分かる。
においをたどっていくと、森の中に簡素な小屋掛けをした炭焼き窯がある。窯に火を入れて、もう1週間。炭焼き人は昼も夜も付きっきりで火の番をしている。独特の緊張感が漂っている。
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焼いているのは備長炭。炭材のウバメガシは、海岸や岩塊が多い山の急斜面の、乾燥してやせた土地に生育する。成長が遅く、木質が密で、硬くて重い。備長炭はそれをさらに硬く焼く。
窯の火は800度近くまで上げる。さらにふさいであった焚(た)き口を開けると、飽和状態にあった窯に酸素が供給されて1200度まで上がる。火が透明感のある黄金色に輝き、原木が紅蓮(ぐれん)の炎に巻かれて血管が脈打つように躍動する。燃えつきてしまわないかと心配になる。
「ねらし(精錬)だ。これをやらないといい白炭にならない」
火が最高潮に達したときに、エブリという鉄のカギ棒で窯の中の炭をかき出し、素早く灰に水を含ましたスバイをかけて一気に冷やす。刃物の焼き入れと同じで、さらに硬くなる。ノコギリでは切れないので、たたいて折る。キーンと、澄んだ金属音がする。スバイの白い粉が付着するので白炭とも呼ばれる。
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「備長炭」の名は、創始者の備後屋長右衛門に由来する。白炭は、窯の中で蒸し焼きにして、自然冷却してから取り出す黒炭と違って、炭素の含有量が95%あり、熱カロリーが高い。余分な水分がなく、不純物が少ない。遠赤外線の効果でカリッと焼け、素材の味が損なわれない。世界に比類なき高級燃料。
最近は、燃料以外の用途が注目されている。水やお湯につけておくと水を浄化すると同時に、ミネラル成分が溶け出して、消化のいいアルカリ性のミネラルウオーターになる。ご飯もおいしく炊ける。冷蔵庫やタンスなどの除湿やカビ防止、消臭効果がある。
また、窯の煙から抽出する木酢(もくさく)液は、生ゴミや排水口、ペットなどの消臭や、土壌改良に威力を発揮する。風呂に入れると身体の芯まで温まり、肌がスベスベして温泉気分が味わえる。
木炭の隠れたパワーは、現代の都市型生活でこそ見直されている。
 | | 熊野三山の一つ、熊野本宮大社 |
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 | | 熊野古道の茶屋 |
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