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郷土食が生んだ造形美   くらしの良品探訪タイトル
イラスト
【イラストより】ニシン鉢作りは代々、姑(しゅうとめ)から嫁に受け継がれてきた。眞理子さん(八代目の奥さん)、宗像(むなかた)絹代さん(七代目の奥さん)
第6回
ニシン鉢 ニシン鉢
福島県会津本郷町


地図
 女の人が明るくて元気のいい家は、端からみてもほほえましい。いつも細かいところに目を配ってテキパキと動き、その家の家風や味を守り継いでいく。男は借りてきた猫のようにおとなしいが、どっしりと屋台骨を支える。

 そんな味わいのある焼き物が、福島県会津本郷町にあった。会津名物「ニシンの山椒(さんしょう)漬け」に欠かせない「ニシン鉢」がそれ。ニシンを漬けるために作られてきた四角い鉢だが、一切の無駄と、小手先の作為や虚飾をそぎ落とした、暮らしの道具としての美と、たなごころのぬくもりが滲(にじ)み出ている。使い方を限定しない慎み深さが、逆に無限の可能性を秘めている。この鉢に引かれる。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 ちなみに「ニシンの山椒漬け」は、新鮮な魚が入らなかった会津地方ならではの郷土食。鉢に身欠きニシンと山椒の葉を交互に積み重ね、三杯酢で漬け込む。

 酢と山椒の風味がニシンにしっとり染みこんでおいしい。昔は、山椒の新芽が出る頃に、どこの家でも作った。ニシン鉢もその時期にしか作られなかった。

 ニシン鉢は「宗像窯」で作られている。1719(享保4)年に福岡から移り住み、宗像神社の宮司をしながら窯を焼いた家柄で、現当主、亮一さん(70)で7代目になる。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 そもそも会津の焼き物は、会津若松の鶴ケ城の屋根瓦を焼くことから始まり、明治中期、会津本郷には八十数軒の窯元があった。山の斜面の登り窯に昼夜別なく火がたかれたが、いまは15軒に減り、登り窯も宗像窯だけになった。

 「ニシン鉢は、女の仕事なんです」

 代々、姑(しゅうとめ)から嫁にその技法が受け継がれてきた。使われるのは地元白鳳山に産する的場土。粘りがあって、硬く焼ける。

 この土をたたき締めて、5枚の陶板を作り、張り合わせる。縁が厚く、下がやや薄く作られている。

 天日で自然乾燥させて窯で焼き上げる。塩分や酸に強いうわぐすり「飴釉(あめゆう)」が、独特の深い色合いを醸し出す。また、ニシン鉢は「呼吸する」という。気温や湿度を微妙に調整する。においも染みこまず、変形もしない。「土もの」のよさだ。

 かつては、暮らしの道具としてどこの家にもあったニシン鉢は、形がシンプルで造形が優れているので、最近は用途にこだわらず、いろんな使い方をするようになった。どんな使い方をしても、ズシリとした存在感がある。


鶴ケ城
白虎隊の悲劇で知られる鶴ケ城
=会津若松市
常勝寺
陶祖をまつる常勝寺

◆お取り寄せ
 「ニシン鉢」中(25×19×13センチ、1万5000円)、小(21×16×10センチ、1万円)、豆ニシン鉢(15×11×7センチ、2400円)、同マス角(12.5×11×7センチ、2300円)。税・送料別。問い合わせは宗像窯(TEL0242・56・2174、FAX56・3909)。

プレゼント
 豆ニシン鉢、同マス角を各3人に。
 はがきに郵便番号、住所、氏名、年齢、職業、電話番号、プレゼント希望と記し、郵便番号969・6127福島県会津本郷町本郷上3115、宗像窯。10月8日必着。10月中旬発送。


(2003年9月24日朝日新聞東京本社夕刊のマリオン紙面から)

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