
【イラストより】山まゆから採った細い糸を縒(よ)り合わせて布を織っていく。
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第12回 山まゆタオル
 京都府野田川町 |
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天下の名勝、天橋立を山の上から股のぞきすれば、なるほど阿蘇の海を鶴のくちばしのように伸びて対岸をつなぐ砂州が天に昇る「天の浮橋」のように見える。イザナギ、イザナミの国生みの神話が、鮮やかによみがえる。頭に血が上って腰を伸ばすと、くの字に折れた松の列に白波寄せる海がキラキラと輝いている。
天橋立をあとに、阿蘇海に注ぐ野田川に沿って丹後路を少し下ると野田川町。ひなびた街道を歩くと、そこここからカチャカチャと機織りの音がもれてくる。野田川町は「丹後ちりめん」の産地。地名の由来はヌタ(沼田)川で、古くは湿地だったといわれる。その高温多湿で蒸し暑い、人間には暮らしにくい気候が機織りに適していた。
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かつては、国内の白生地生産の7割を占め、県外から来た若い女性の労働者でにぎわった。今も小さな機屋さんたちが頑張っている。「山まゆタオル」もここで生まれた。
山まゆは野蚕(やさん)、柞蚕(さくさん)ともいう。野生の蚕で、まゆは独特の色と光沢がある。山歩きの途中で、高い木の枝の先についた、淡緑色の山まゆを見つけることがある。樹木の露のように美しい。
「野生のまゆから採る絹は、婦人服では最高級品やけど、糸にクセがあってふぞろいなので、着物にはなかなか使えません。それを、縒(よ)り方を工夫してタオルに織っています」
「丹後加工糸」の有吉富雄さん(55)が苦心を語る。12年ほど前から山まゆタオルを作り続けている。一般に、絹で織るちりめんは、ぬらすと繊維が硬くなるが、逆にぬらしたら柔らかくなる糸の縒り方に、試行錯誤した。
精練の段階で、まゆが固まる成分のセリシンを取り除き、細い糸を機械で縒り合わせる。1メートルほどの糸を作るのに、右縒り、左縒りを3千回繰り返す。さらにタオルはループ状に織る。お湯につけるとフワッとした肌触りが出るようになった。
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山まゆの繊細な絹糸を織り上げた布は、薄茶色でつややかな気品がある。光に透かして見ると、糸のすき間に朝露の粒子がちりばめられたように輝いている。
天然繊維の絹は紫外線をブロックする。アレルギーや皮膚の弱い人にもいい。風呂で体を洗ったり、洗顔に使ったりすると、角質の汚れを落とし、新陳代謝をよくして肌をつややかにする。自然のゆりかごに抱かれて生命を謳歌(おうか)する山まゆ。その糸を紡いだ布には心まで洗われるロマンがある。
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| 日本三景のひとつ、天橋立=宮津市 |
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絹タオル(山まゆ・正絹、各4500円)、U型の洗顔用手袋(山まゆ、1800円)。税・送料別。
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