
【イラストより】吉野杉の角材を挽(ひ)いた後のを端材を加工して割りばしを作る。
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第18回 割りばし
 奈良県下市町 |
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奈良県のほぼ中央に位置する吉野は、竜門山系と吉野大峯の山々に囲まれ、スギやヒノキの美林が濃い緑の山並みとなって幾重にも連なっている。
てっぺんの枝先がとがっているのは血気盛んな若い木、穏やかな丸みがあるのは、悟りの境地になった老年期の木。山には多層な生命が宿っている。
スギやヒノキに恵まれた吉野は、古くからはし作りの里として知られている。吉野のスギの割りばしは最高級品として他地の追従を許さない。
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その起源は、南北朝の時代に後醍醐天皇に献上したのが始まりとされている。木目が詰んだスギばしの美しさと芳香が喜ばれ、公卿や僧侶の間に広まり、一般に普及していった。
「スギのはしは吉野でしか作れません。目が細かくて木目がきれい。香りもいい。吉野は、夏は昼間は暑いけど夜はぐっと冷える。冬はそりゃさぶいでぇ。だからいいスギが育つ」と、はし職人は自慢する。
普及品は機械化されているが、高級品は今も熟練の職人が手作りしている。特に、赤身のスギばしは高級品。かつて、千利休は茶会を催す際に赤スギのはし材を取り寄せ、客の数だけはしを作ったといわれる。
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材料はスギの背板。原木の中心部を柱などの建材に挽(ひ)いた端材を使う。燃やすか捨てるしかない木に、はしという新しい命を吹き込む。
製材した端材は、野外で約3カ月間、自然乾燥させる。風雨にさらすことでアク抜きにもなる。赤身のはしを作る時は、皮をはぎ、湾曲したナタで、はしの長さに切った板から芯に近い赤い部分を取る。
はしの厚みに柾目(まさめ)割りしてから1本ずつ小割りする。それを作業台に並べてカンナで両面を削り、縁を削って1本1本仕上げていく。最後に天日に1日から3日干す。天日で干したはしは木肌のつやがいい。
割りばしにはさまざまな種類がある。天(頭部)を大きく斜めにカットした「天削(てんそげ)」、真ん中が太く両端が細い「利休」、角をすべて削ってある「元禄」。そのほかに「小判」「丁六」「石州」「矢形」「八角」などがある。
料理に添えられる割りばしを割る時の心の豊かさと平穏さ。たなごころになじむ柔らかな感触と、ほのかににおいたつ木の香。清潔で美しい日本の文化が1膳(ぜん)のはしに凝縮している。
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| 天日干しするとつやが出る |
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